2009 Fiscal Year Annual Research Report
認知機能低下をもたらす神経変性および非変性鑑別のための病態分子マーカー検索
Project/Area Number |
21591489
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
相馬 仁 Sapporo Medical University, 医療人育成センター, 教授 (70226702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小海 康夫 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20178239)
齋藤 利和 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50128518)
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Keywords | アルツハイマー病 / プロテオミクス解析 / アネキシンA5 / Ca^<2+>ホメオスタシス / 血漿分子マーカー / トランスジェニックマウス / ROC曲線 |
Research Abstract |
認知症の中で最も大きな割合を占めるアルツハイマー病(AD)の診断精度の改善に寄与するための研究の一つとして、血漿分子マーカーの検索を行ってきた。ADでは、異常な謝産物Aβ_<42>が神経細胞障害をもたらす主な因子であると考えられる(アミロイド仮説)。これまで脳脊髄液中のAβや微小管のタウ蛋白質の検出が有用と考えられてきたが、侵襲性の高いこの方法は一般的ではない。我々は、Aβが神経細胞にCa^<2+>ストレスを与えることに注目し、神経培養細胞モデルを用いてAβ_<42>による細胞障害を与え細胞外に分泌された物質に注目した。質量粉析器(LC-MSIMS)によるプロテオミクス解析で、Aβ刺激に特有の蛋白質の同定を試みた。その中で、Ca^<2+>結合蛋白質でCa^<2+>ホメオスタシスに関することが示唆されているアネキシンA5に注目した。アネキシンA5は、ヒト血漿に微量に存在し、また血液脳関門を通過することが報告されている。我々は、アネキシンA5がAD患者の血中で上昇する可能性を考え、ヒトの血漿アネキシンA5濃度測定ができる酵素抗体法(スフィアライト法)を開発し、老人クラブに所属する279名の健常者と老年精神医学の専門家の診断を受けた150名のAD患者血漿を用いて検討した。その結果、カットオフ値2.19ng/mlで感度、得意度それぞれ82%、78.1%で診断可能であることが分かった。また、ROC曲線の下側面積は87%となり、有用な血漿マーカーであることが示された。更に、ADのモデル動物(トランスジェニックマウス(Tg2576))を用いて免疫化学的方法で検討した。その結果、野生型マウスに比べてTg2576の脳で、アネキシンA5発現の上昇が認められ、他臓器では変化は認められなかった。また、Tg2576の血漿でもアネキシンA5の上昇が認められた。アネキシンA5のみならず、他の細胞障害マーカーを探索し、客観的な診断方法の確立に結び付けたい。
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