2011 Fiscal Year Annual Research Report
児童期の双極性気分変調に関する実態調査と類型化の試み
Project/Area Number |
21591504
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
上原 徹 群馬大学, 健康支援総合センター, 准教授 (60303145)
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Keywords | 前頭前野 / 軽躁 / 児童青年 / 大学生 / 双極性障害 / 解離 / 近赤外線分光法 / 脳機能 |
Research Abstract |
これまでの児童青年期気分変調スペクトラム実態調査の結果を踏まえ、本年度は一般健常青年ボランティアを対象に、近赤外線分光法を用いた脳機能検査を試行し、双極性気分変動のスクリーニング得点や心理行動評価との関連性を検討した。Near infrared spectroscopy(NIRS)は、微量の光を用いて生体組織の酸素化ヘモグロビン量相対変化を非侵襲的に測定する機能画像法である。今回前頭葉に特化した小型研究機器(16channel)を用い、標準課題である言語流暢施行中の前頭葉賦活を測定した。同時に、高揚気分や易刺激性など双極性気分障害を査定する13項目の質問紙MDQ(mood disorder questionnaire)や、抑うつ、解離、怒り表出との関連について統計解析を行った。対象は本研究の倫理条項を文書で説明し、研究協力者として検査に参加した大学生(男性15名女性29名、平均年齢20.5才)である。解析の結果、課題施行中のヘモグロビン濃度長(脳血液量相対変化に相当)を平均化すると、前頭葉に広く賦活が認められた。MDQの得点(平均3.4、最高値10)により双極性障害が疑われた事例はおらず、MDQの中央値4以上と未満の2群に分けて前頭葉賦活波形を統計解析したところ、高得点群では左右3部位で賦活が少ない傾向を認めた(多重比較では有意差なし)。前頭葉各チャンネルの賦活量とMDQ得点との偏相関を重回帰分析で検討したところ、左外側部が気分変調得点と有意な負相関を示した(beta=-.31,p<.05)。加えて、解離尺度と前頭葉賦活との相関を検討した結果、前頭極付近で解離特性と有意な負の相関を示した。一般大学生における微細な気分変調傾向は前頭葉低賦活と関連することが示唆され、特に左外側前頭前野の機能低下と相関する可能性がある。今後気分変動に影響する脳機能要因について、児童期臨床群を対象に追試する必要がある。
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