2009 Fiscal Year Annual Research Report
抑うつに関与する脳腸神経ペプチドが気分障害患者の脳基盤異常に与える影響
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21591519
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松尾 幸治 Yamaguchi University, 医学部附属病院, 講師 (00292912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 周作 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (10403669)
渡辺 義文 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90182964)
松原 敏郎 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (60526896)
江頭 一輝 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (90437624)
大朏 孝治 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (10535256)
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Keywords | 気分障害 / グレリン / レプチン / 前頭葉機能 |
Research Abstract |
対象は、9例の気分障害患者(平均年齢46.8歳、7名女性)および17例の健常対照者(平均年齢63.9歳、11名女性)だった。本研究開始は山口大学医学部附属病院Institutional Review Boardの承認を得ており、気分障害患者および健常者は、研究参加前に書面により同意の得られた者のみが参加した。気分障害患者は、全例が大うつ病患者で、いずれもHamilton Depression Rating Scale(HAM-D)で18点以上の中等症以上のうつ状態だった(HAM-D平均±標準偏差22.1±3.8)。採血にて生化学、血算によるスクリーニングの他、血漿中のactive ghrelin、desacyl ghrelin、leptin濃度を測定した。さらに、前頭葉機能をみる神経心理学的検査を行った。 結果、うつ病患者が有意に年齢は低く、性差は有意差がなかった。Body mass index、空腹指標(Visual analogue scale ; VAS)、空腹時血糖、インスリン量、総コレステロール、中性脂肪、自由脂肪酸は両群で有意差を認めなかった。年齢・性別を共編量とした分散分析の結果、うつ病患者と健常者では血漿中のactive ghrelin(うつ病24.8±15.4、健常者11.1±7.5fmol/ml), desacyl ghrelin(111.7±81.3、103.3±136.3fmol/ml)、leptin(9.7±8.1、6.4±4.4ng/ml)は有意差を認めなかった。うつ病患者では、HAM-Dの総得点とこれらの濃度とは有意な相関はみられなかったが、下位項目の「病状による体重減少」スコアとleptin濃度が有意に負の相関を示した(r=-0.67, p=0.05)。また、うつ病患者ではVASスコアとactive ghrelin濃度が有意な負の相関(r=-0.86, p<0.01)を示したが、健常者ではこういった傾向は見られなかった。前頭葉機能は、うつ病患者において、Stroop課題の正解数、達成数、Trail Making test A, Bで健常者より有意に成績が悪かった。うつ病患者において、これらの結果と、active ghrelin、desacyl ghrelin、leptinの血中濃度とは有意な相関はみられなかった。 今回は少数例の検討であるが、うつ病患者の空腹感および体重減少とこれらの神経ペプチドと関連があること示しており、うつ病患者の食欲不振と健常者のそれとは異なる病態を示すことが示唆された。また、うつ病患者は前頭葉機能低下がみられるが、それらはこれらの神経ペプチド濃度とは関連がないことが示唆された。
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