2011 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症モデルラットにおけるフォスファチジルイノシトール系の関与について
Project/Area Number |
21591526
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
法山 良信 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (20305725)
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Keywords | 統合失調症 / PI-PLC / social isolation |
Research Abstract |
昨年度までに正常マウスの海馬CA1領域における錐体細胞、介在ニューロンに対するドパミン、フォスファチジールイノシトエール系を介するD1受容体アゴニストであるSKF83959の効果を調べ終えた。続いて、統合失調症モデルマウスとして当初予定していたNMDAアンタゴニスト投与によるモデルマウスに代わって、Social Isolation model mouseを導入開始した。行動学的実験では、Prepulse Inhibitionの減弱、Y-maze taskにおけるpercent alterationの低下が見られ、統合失調症モデルマウスとしての妥当性を確認した。続いてマウスの前頭前野第5層の錐体細胞から興奮性後シナプス電流(EPSC)を記録した。自発性の興奮性シナプス電流(sEPSC)の振幅においてはモデルマウスに変化は見られなかったが、頻度において減弱が見られた。さらに微小興奮性シナプス電流(mEPSC)においても比較を行ったが同様に、振幅ではなく頻度においてモデルマウスにおいて減弱がみられた。平行して、自発性の抑制性シナプス電流についても記録したが、モデルマウスにおける変化は振幅、頻度の両方において認めなかった。sEPSC、mEPSCにおける頻度の減少は前シナプスの機構の異常によるものか、またはシナプス数の減少などによるものかを調べるため、現在刺激誘発性の興奮性シナプス電流を記録し、paired-pulse ratioを群間で比較することで前シナプス性の異常があるのかどうか検討しているところである。現時点で、興奮性シナプス伝達に異常をきたしていることが確認できており、今後はフォスファチジールイノシトール系を介するD1受容体アゴニストSKF83959により電気生理学的異常と行動学的異常を回復させることができるかどうか検討していきたい。SKF83959がこれらの異常に対して何らかの治療効果を持つのであれば、統合失調症の新たな治療薬の候補として期待したい。
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