2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21591628
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 宏之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60348266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 博之 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (10241994)
宮田 哲郎 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70190791)
重松 邦広 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20215966)
木村 秀生 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60327070)
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Keywords | 小口径人工血管 / MPCポリマー / 抗血栓性 |
Research Abstract |
虚血性心疾患や閉塞臍動脈硬化症の患者数が確実に増加しつつある現在において、開存性にすぐれた径4mm以下の小口径人工血管の開発は喫緊の課題である。我々は高い抗血栓性を有するMPCポリマーに着目した。これは、リン脂質側鎖を有し生体細胞膜表面に模した構造をとり、内皮細胞を誘導せずともこのポリマーで内面を被覆することにより高い抗血栓能を持つ人工血管を開発できる可能性がある。グラフトとして、既製の4mm ePTFEないしはセグメント化ポリウレタンで独自に作成した4~5mm径の人工血管に、MPCポリマーをコーティングしたものを使用した。この製造は工学部マテリアル工学科石原研究室で行った。動物実験は、犬(約12kg)に対し、全身麻酔下で、頸動脈または大腿動脈に、滅菌済みのグラフト(片側にMPCコーティング済みグラフト、対側に未コーティングのグラフト)を移植した。一週間おきに体表からの超音波でグラフトの開存を確認し、閉塞が認められたら即採取、開存していれば4週間後に採取した。実験開始初期は、コート済み、未コートの人工血管いずれも、一週間後の開存を認めたものはごくわずかであった。手術手技や縫合糸の変更、工学部におけるコーティング手技やMPCと共重合させるポリマーの変更などを積み重ね、徐々に長期開存率を高めてきた。しかし昨年度末に至るまで、4週間開存に関してコート済み、未コートいずれも3/37(8%)と差を認めなかった。採取された人工血管の内腔表面には、両側同程度の血栓の付着を認め、組織標本においても、ほぼ同程度の人工血管の内膜肥厚や平滑筋細胞の増生を認めた。現在、MPCの有する抗血栓性を、人工血管表面に有効に発現させるよう、さらにコーティング手法や手術手技を改善してきた。また、セグメント化ポリウレタンで独自に作製した4mm径の人工血管に対してもMPCコーティングを施し、開存性に優れた小口径人工血管の開発を行ってきた。今後はさらに実験例数を蓄積して、小口径人工血管の有効性を評価する予定である。
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