2010 Fiscal Year Annual Research Report
新たな乳癌治療のための家族性乳癌原因遺伝子の新規関連分子の機能解析
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21591656
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 奈津子 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (50361192)
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Keywords | がん / BRCA1 / 細胞分裂制御 |
Research Abstract |
家族性乳癌原因遺伝子BRCA1はその生殖細胞系列変異による卵巣癌発症リスクが約40%、乳癌発症リスクは約80%とされる重要な癌抑制遺伝子で、その遺伝子産物BRCA1は、DNA修復、中心体制御、クロマチンリモデリング、転写制御などの細胞内の多様な機構に関与する。BARD1はBRCA1とヘテロダイマーを形成し、BRCA1の腫瘍由来の点突然変異によりBARD1との結合能とユビキチン化能は阻害される。よって、BARD1は、BRCA1の癌抑制機能を制御すると考えられる。そこで、BARD1と結合する分子をプロテオミクス解析で探索したところ、BRCA1/BARD1複合体に結合する新たな分子を同定した。その機能を解析したところ、細胞分裂制御に重要な中心体やmidbodyに局在することが明らかになり、その分子の発現を抑制すると、中心体数の増加と多核細胞の増加、増殖速度の低下、細胞質分裂の異常が見られた。また、乳癌細胞株で本分子の変異が既に同定されており、この遺伝子変異により、BRCA1の中心体制御能が変化することも明らかにした。これまで、BRCA1とBARD1は、ともに紡錘体極に局在するが、ミッドボディーにはBARD1のみが局在することが報告されている。中心体に関しては、本分子の発現を抑制した場合と同様に、BRCA1の機能を阻害した場合も中心体数が増加することが報告されており、中心体の制御には、BRCA1、BARD1と共に本分子が関与していることが示唆される。一方、細胞質分裂においては、本分子はBARD1と共に機能することが示唆される。今後、中心体の制御や細胞質分裂における本分子の機能をより詳細に明らかにすることで、新たな発癌機構の解明と治療法の開発のための分子基盤を築くことが可能になると考えられる。
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