2010 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞とキラーT細胞が発現するToll様受容体の癌免疫療法への応用
Project/Area Number |
21591668
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
原田 守 島根大学, 医学部, 教授 (50260716)
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Keywords | 癌 / 免疫療法 / Toll様受容体 |
Research Abstract |
Toll様受容体(TLRs)は、生体防御・免疫システムにおいて重要な役割を担っている。一方、多くの癌細胞が種々のTLRを発現しているにも拘らず、癌細胞でのTLRsの役割やこの分子を標的にした治療への応用に関する研究は少ない。当該研究では、癌細胞に発現するTLRsを標的とした癌治療の可能性を検討した。その結果、1)ヒト前立腺癌であるLNCap細胞は、合成二本鎖RNAであるpoly(I:C)の存在下で、TLR3を介するシグナルによりアポトーシスと増殖抑制(growth arrest)が生じる。2)LNCaP細胞のアポトーシスは、カスペース9依存性であり、p53の発現増強を伴っている。3)癌細胞の増殖抑制は、主にC-mycやcylinD1の発現抑制とp21の増加による細胞周期の変化による。4)これらの抗がん効果は、恒常的にAktを活性化させると減弱することから、PI3K/Akt経路の抑制により誘導された可能性が示唆される。5)Poly(I:C)処理されたLNCaP細胞では、LC3 type-IIの発現が増強しLC3 fociが形成されたことから、オートファジー(自食作用)も同時に誘導されている。6)オートファジーはアポトーシスに拮抗的に作用する。7)癌細胞内のMDA-5などのアジュバント受容体を刺激すると、前立腺癌細胞だけで無く多種類の癌細胞〔乳癌、腎癌〕にもアポトーシスを誘導できる。8)これらの癌細胞においても、オートファジーとアポトーシスは、相互に制御しあっている。以上のことを明らかにした。これらの結果は、poly(1:C)をいう二本鎖RNAを用いて、癌細胞に発現しているアジュバント受容体を標的にすることにより、多種類の癌細胞にアポトーシスと増殖抑制を誘導できる可能性を示している。
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Research Products
(12 results)