2011 Fiscal Year Annual Research Report
トリプルネガティブ乳癌におけるユビキチンリガーゼによる細胞周期制御機構の解明
Project/Area Number |
21591671
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山本 豊 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (20398217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩瀬 弘敬 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (40211065)
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Keywords | 乳癌 / ユビキチンリガーゼ / トリプルネガティブ乳癌 / Fbw7 / Skp2 / 予後因子 / 細胞周期 |
Research Abstract |
本研究では、トリプルネガティブ(TN)乳癌におけるユビキチンリガーゼによる細胞周期制御機構を解明するために、乳癌細胞株を用いてユビキチンリガーゼ(Skp2,Fbw7)の発現と細胞周期との関連や薬剤感受性、治療標的の可能性について検討することを目的としている。Skp2はCDK inhibitorであるp27のユビキチン化による分解に関与しており、細胞周期を促進するように働く。一方、Fbw7はリン酸化されたc-Mycやcycline Eをユビキチン化する。Fbw7は細胞周期に対し抑制的に作用する。細胞周期のre-entryに関与する2つのユビキチンリガーゼの乳癌での発現とその臨床的意義および薬剤感受性や治療標的の可能性を検討する予定である。原発乳癌組織を用いた検討によりFbw7 mRNAおよびタンパク発現低下は癌の悪性度と相関し、特にトリプルネガティブ乳癌で発現が低下していた。さらにFbw7は独立した予後因子であった。Fbw7が発現している乳癌細胞株(T47D)をsiRNAを用いてその発現を抑制すると、細胞増殖は親株に比べsiRNAでFbw7を抑制した株で有意に促進された(p=o.016)、また、細胞周期の解析では、親株に比べFbw7を抑制した株ではG1/G0期の細胞割合が減少し、S期やG2期の細胞割合が有意に増加していた。さらに、タンパク発現について解析すると親株に比べFbw7を抑制した株ではc-Mycの発現が増加し、cyclinEの発現も増加していた。これらの結果から、乳癌細胞株においてもFbw7はc-Mycの発現調節を介してG1期への移行を制御している可能性が示された。臨床検体においてもFbw7の発現低下が認められる乳癌ではc-Mycの発現およびcyclinEの発現があり、さらに細胞増殖マーカーであるKi67 labeling indexは高値を示した。Fbw7とSkyp2との組み合わせで解析するとさらにこの傾向は強くなり、Fbw7低下/Skyp2陽性例は他の組み合わせに比べ増殖活性が最も高く、予後が最も不良であった。乳癌細胞株ならびに乳癌組織においても細胞周期を制御するタンパクのユビキチンリガーゼにより細胞増殖が制御され、これらのユビキチン発現が増殖活性や予後に影響を与えていることを示した。
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