2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規分化誘導剤とラパマイシンによる固形癌細胞の増殖抑制効果の分子機構解析
Project/Area Number |
21591686
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Research Institution | 埼玉県立がんセンター |
Principal Investigator |
粕壁 隆 埼玉県立がんセンター, 臨床腫瘍研究所, 主幹 (50152658)
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Keywords | Cotylenin A / Rapamycin / 分化誘導剤 / 併用効果 / Aktリン酸化 / mTOR |
Research Abstract |
私たちは白血病細胞の分化誘導剤として見出してきた物質が固形癌細胞に対しても有効な抗癌作用を示すことができるかを検討している。私たちはすでに、植物成長制御因子として報告されているcotylenin Aが白血病細胞に対する強い分化誘導剤であることを報告している。さらに、cotylenin AとmTOR(mammalian target of rapamycin)を標的とする分子標的治療剤であるrapamycinがヒト乳癌細胞MCF-7の増殖を相乗的に抑制することを見出している。現在、これらの増殖抑制効果の分子的基盤について検討している。 RapamycinはMCF-7細胞のmTORシグナリングを抑制するが、Aktのリン酸化を逆に促進する。このrapamycinによるAkt(Ser473)リン酸化の誘導はrapamycin自身の増殖抑制効果を減弱させるものと考えられている。私たちは、cotylenin Aがrapamycin処理で誘導されるこのAkt(Ser473)のリン酸化を顕著に抑制することを見出した。これらの結果はAkt(Ser473)のリン酸化のcotylenin Aによる阻害が併用効果に少なくても一部は関連することを示唆している。今回は、Akt(Ser473)リン酸化の誘導を引き起こさないPI3KおよびmTORC1/2阻害剤であるPI-103とcotyleninAとの併用効果をヒト乳癌細胞を用いて検討した。その結果、PH-103は乳癌細胞のmTORシグナリングとAkt(Ser473)のリン酸化の両方を抑制していたが、cotylenin Aとの併用処理では細胞の増殖を相乗的に抑制できることが判った。これらの結果はcotylenin AはAkt(Ser473)のリン酸化阻害効果以外の作用でも併用による相乗効果を発揮できることを示唆する。
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