2010 Fiscal Year Annual Research Report
DNAメチル化異常の網羅的解析による消化器癌易罹患性の評価
Project/Area Number |
21591710
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 浩一 自治医科大学, 医学部, 助教 (70332369)
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Keywords | 遺伝子修飾異常 / 脱メチル化 / メチル化 / 潰瘍性大腸炎 / ヘリコバクターピロリ胃炎 / 大腸癌 / 胃癌 / 癌易罹患性 |
Research Abstract |
【目的】本研究は、正常組織で観察される遺伝子修飾異常(DNAメチル化異常)の情報をもとに、癌のかかりやすさを予測しようとするものです。DNAメチル化異常は癌組織のみならず、非癌部や炎症組織でも認められるため、その情報を癌発症の予測や早期診断に利用します。我々は、長年炎症に暴露された組織の異常に注目し、炎症性疾患を対象にメチル化異常の蓄積を評価しました。【方法】対象はHP陽性胃癌癌組織(ST)70例とその背景粘膜組織(STN)70例、HP陽性胃炎粘膜組織(SI)100例及びHP陰性胃炎粘膜組織(SC)100例、また潰瘍性大腸炎(UC)関連組織として担癌UC癌組織(CT群)6例、背景粘膜組織(CN群)6例、非担癌UC粘膜組織(I群)16例です。胃粘膜組織は、脱メチル化のターゲットであるセントロメア領域の反復配列であるサテライトαとその結合蛋白であるセントロメア結合蛋白(CENPH)の発現、さらにゲノムのコピー数の変化との相関を検討しました。大腸粘膜組織は「DNA array MS-AFLP」を用いて、9.654箇所のNotI領域の異常メチル化の有無を評価し、クラスタリング解析を行いました。【成績】サテライトαの脱メチル化はSC、SI、ST、NSTと段階的に上昇し、とくにSIとST間で大きな変化が認められ、ピロリ感染による脱メチル化異常が発癌に関与していることが示唆されました。CENPHの発現も同様にSC、SI、ST、NSTと段階的に上昇していました。サテライト領域の脱メチル化レベルが高い症例では、STNの状態からコピー数変化を認めました。DNA array MS-AFLPで測定したメチル化異常/脱メチル化異常(平均±SD)はI群2.0%±1.0/1.3%±0.50,CN群2.4%±0.76/2.4%±1.1,CT群4.1%±1.7/3.5%±2.0であり、総メチル化異常はI群3.1±0.78、CN群5.0±12、CT群7.8±3.6でした。I群、CN群、CT群と段階的な変化を認めました。メチル化プロファイルはCN群ではCT群と高度に類似しており、I群は炎症の程度や原疾患の罹患年数に応じてCT群に類似する傾向が認められました。クラスタリング解析では、CN群、CT群に共通するメチル化異常は51カ所、脱メチル化異常は49カ所に認められた。メチル化異常を来した51カ所の遺伝子の8割がCT群においてそのmRNAの低下が認められ、これらの遣伝子は潰瘍性大腸炎の癌化に関与していることが示唆されました。【結論】異常メチル化の蓄積を網羅的に検出し評価することにより、胃癌や潰瘍性大腸炎の癌易罹患性を予測しうると考えられました。我々が独自に開発したDNAメチル化マイクロアレイを用いる事により、網羅的に遺伝子異常、遺伝子修飾異常を捉えることが可能となり、分子生物学的な疾患プロファイルの作成が実現されます。このプロファイルは癌のみならず、自己免疫疾患をはじめとする種々の臓器障害などの後天的疾患の発症プロセスに関与した予知医療マーカーとしての応用も期待されます。
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Research Products
(5 results)