2009 Fiscal Year Annual Research Report
食道癌におけるケモカインネットワークを標的とした新しい癌治療法の開発
Project/Area Number |
21591712
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
竹内 裕也 Keio University, 医学部, 講師 (20265838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 雄光 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (20204878)
入野 誠之 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20445216)
西 知彦 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70445386)
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Keywords | ケモカインレセプター / ケモカイン / 食道癌 / リンパ節転移 |
Research Abstract |
ケモカインレセプターCCR7はリンパ節転移に関わるkey moleculeの一つとして注目されており、我々は昨年度CCR7が食道扁平上皮癌におけるリンパ節転移及び予後に関わっていることを報告した。本年度は、この臨床病理学的知見をもとに、その役割を分子レベルで解明することを目標とした。 In vitroの実験では、食道扁平上皮癌細胞株TEを用いて、その機能解析を行った。細胞運動を直接観察することができるデバイスを用いて検討したところ、controlに比してligandであるCCL21及びCCL19を加えた場合、遊走能が亢進している所見が得られた。また、リンパ管内皮細胞を敷き詰めた中に細胞を撒き、その接着能を検討したところ、ligand(CCL21)を加えた場合、有意に接着能が亢進することが示された。また、中和抗体を加えた場合、その接着能力は失われた。これらの所見から、食道扁平上皮癌細胞株TEにおけるCCR7は機能的であり、そのリンパ節転移における役割は、主に接着能力の亢進に依ることが示唆された。 In vivoにおけるCCR7の役割は、リンパ節転移モデルマウスを用いて検討を行った。モデルは、5週齢のヌードマウスの皮下に通常の細胞株とCCR7を過剰発現した細胞株を打ち込み腫瘍を形成させ、続いてこの腫瘍の一部を別のヌードマウスの前腕に同種移植することで確立した。検討は、3週、4週、5週後に一次リンパ節である腋窩リンパ節を摘出しDNAを抽出、Alu配列を用いてPCRにより腫瘍量を定量化することにより行った。結果、CCR7を過剰発現した細胞株は、特に早期(3週目)において、有意に腫瘍量が多かった。これらの所見は、昨年度報告した、T1の食道癌において、CCR7発現が有意にリンパ節転移及び予後に関わっている所見に合致するものと考えられた。 これら一連の検討は、この分子をターゲットとした新たな転移抑制治療の礎となり得るものと考えられる。
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