2011 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌におけるPI3K経路の解析と新規分子標的治療薬の検討
Project/Area Number |
21591721
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須並 英二 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70345205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 丈二 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20251308)
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Keywords | 大腸癌 / 化学療法 / mTOR / Rapamycin / 多剤併用療法 |
Research Abstract |
mTOR阻害剤であるRapamycin誘導体は抗腫瘍効果として腫瘍増殖抑制作用や腫瘍血管新生抑制作用を有することが報告されており、現在すでに腎細胞癌で臨床応用されている。本研究ではRapamycin誘導体の一つであるTemsirolimusの大腸癌に対する効果を,単剤および他剤との併用療法の両面で評価することが目的である。これまでに我々はinvitroの実験系において、Rapamycin誘導体が大腸癌細胞に対し増殖抑制作用を有することを報告していたが、今回さらにinvitroの実験において、Temsirolimusが大腸癌細胞の細胞周期をG1期で停止させること,G1期の進行に必要なcyclin D1蛋白の産生を抑制すること,また低酸素下で培養された大腸癌細胞において腫瘍血管新生に重要な働きを持つHypoxia-induciblefactor-alpha蛋白の産生を抑制することを明らかとした。今回明らかとなったTemsirolimusの大腸癌に対する具体的な作用機序は,他剤との併用療法で他の薬剤を選択する根拠となりうるため,本研究の意義は高いものと考えられる。In vivoの実験においても,マウス皮下腫瘍モデルを用いてTemsirolimusが腫瘍の増殖を抑制すること,この効果の一部が腫瘍細胞の増殖を抑制すること,腫瘍切片を用いた免疫染色法にて腫瘍血管新生の抑制によることを明らかとした。 Temsirolimusのもう一方の作用である免疫抑制作用に関しては,上記のIn vivoの実験においてTemsirolimus投与群と非投与群問で,末梢血中の白血球数など血液学的に差がないこと,脾臓中の白血球分画に変化がないことを確認した。以上よりIn vitro,In vivo両面の検討において,重大な有害事象が生じない投与量において,Temsirolimus単剤で大腸癌の抑制作用を有することを明らかとした。大腸癌に対するRapamycin誘導体の抗腫瘍効果に関する研究はまだ十分ではなく,本研究の結果が今後本薬剤を臨床応用する時に重要な根拠となりうると思われる。
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