Research Abstract |
【内容】Total parenteral nutrition (TPN)では感染症の危険性が高まることが知られている.このことが何らかの腸管免疫の変化のためにもたらされていると考え,以下の実験を行った.マウスを用いたTPNモデルを作成し,手術後10日目(TPN導入7日目)に犠死せしめ,小腸を採取した.採取した腸管より腸管上皮間リンパ球(IEL)を採取して,その分布の変化をflow cytometryで調べた.さらに,RT-PCRを用いて腸管のToll-like receptor (TLR) mRNA発現の変化を調べ,さらに腸管におけるcytokine発現の変化をみた.これらについてsham operationマウスおよび無手術マウスをコントロールとして比較検討した.TPNのマウスではIEL数の減少がみられた,さらにIELでのCD4, CD8, TCRγδ, TCRαβ陽性のT細胞の数が減少していた.また近位小腸,遠位小腸ともに,TLR4, TLR5, TLR7, TLR9 mRNAの発現が亢進していた.また腸管におけるIFN-γ, IL-10, TNF-αなどのcytokineの発現は亢進していた. 【意義】これらの結果より腸管を利用した栄養補給がなされていないTPN下では腸管は炎症状態にあり,bacterial translocationを誘発している可能性が示唆された.またIFN-γによの腸管上皮細胞の変性をきたし,腸管のバリアー機能が低下しており,敗血症をきたしやすい環境にあると思われた.TPNは消化管術後や炎症性腸疾患の際の栄養補給の方法として有用であるものの,経口による摂取がなされないために感染症を惹起することが示唆され,臨床的にも有用な結果を得ることができた.
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