2011 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌における低酸素誘導ゲノム不安定性の分子機構の解明
Project/Area Number |
21591736
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
逸見 仁道 東邦大学, 医学部, 准教授 (90165514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 和俊 東邦大学, 医学部, 教授 (20196447)
有田 通恒 東邦大学, 医学部, 助教 (80307719)
小池 淳一 東邦大学, 医学部, 講師 (30339155)
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Keywords | 遺伝子 / 大腸がん / ゲノム不安定性 / EMAST / 発現制御 / 低酸素 / DNA修復 / GLUT1 |
Research Abstract |
低酸素状態でのゲノム不安定性誘導の分子機構を明らかにすることを目的として、細胞株を用いて一過性の低酸素状態でのDNAミスマッチ修復遺伝子hMSH3の発現制御の分子機構の解析と臨床検体での低酸素状態とhMSH3発現との関係について検討した。 EMAST陽性及び陰性腫瘍での低酸素マーカーであるGLUT1過剰発現とhMSH3発現抑制との関連を病理組織切片で検討した。EMAST陽性腫瘍ではGLUT1過剰発現とhMSH3発現抑制との間に関連が見られた。このことから低酸素によりhMSH3発現抑制が引き起こされていることが示唆された。そこで、低酸素による発現抑制機構の解析を細胞株を用いて検討した。異なる腫瘍組織由来の細胞株10株のhMSH3発現に与える低酸素の影響について調べたところ、迅速型、中間型、無反応型の3つのパターンがあることが分かった。迅速型と中間型の違いはp53異常の有無であった。遺伝的背景が同一でp53遺伝子の変異のみが異なる3組の細胞株でp53の影響を調べたところ、野生型p53はhMSH3発現抑制を速めることが分かった。更に、p53異常細胞ではhMSH3のheterodimer形成のパートナーであるhMSH2の発現抑制がほとんど見られないことから、hMutSαが機能し、hMutSβが機能しない状況が生じることが示唆された。 これらの解析結果から、EMAST腫瘍の特徴としてp53変異細胞で起こることが考えられた。今後、p53変異細胞での低酸素-再酸素供給により、EMASTを含むゲノム不安定性が誘導されることを実験的に検証する必要がある。更に、EMAST腫瘍が肝転移腫瘍に高頻度に見出されることや大腸がんでのp53変異率とEMAST腫瘍の発生率が共に50%前後であることは非常に興味深く、予後判定や発生機構に関わるマーカーの検索など今後の展開に期待が持たれた。
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Research Products
(3 results)