2011 Fiscal Year Annual Research Report
羊膜を用いた柔軟な壁を持ち蠕動運動を行う全周性腸管の再生:イヌを用いた研究
Project/Area Number |
21591737
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
萩原 明郎 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (90198648)
|
Keywords | 小腸大腸肛門外科学 / 再生医学 / 腸管再生 / 羊膜 |
Research Abstract |
消化管再生における癒着防止と腹膜再生は、蠕動運動を行う消化管の再生における重要課題である。この癒着防止と腹膜再生を実現する目的で、腹膜再生と癒着防止を同時に実現する事が出来る再生の足場材料である熱架橋ゼラチンフィルム(以下GF)を新規に開発作成した。昨年度までも、その優れた癒着防止効果と腹膜再生機能を報告してきた。今年度は、より優れた性能を達成するために、癒着防止部の詳細な病理学的検討と熱架橋GFの物理的生物学的特性を検討し、その作用機序を部分的に明らかにした。 体重約10kgのビーグル犬を全身麻酔下に開腹し、回腸末端に腹膜と腸管筋層外層の欠損部分を作成した。(1)同部に熱架橋GFで被覆(2)市販の癒着防止材セプラフィルム(以下SP)で被覆(3)被覆なし群の3群を作成した。1,3,6週後同部を切除し免疫染色を含む病理組織検査で評価した。1週後では熱架橋GF群はSP群、被覆無し群に比べ炎症性変化は軽度で、材料の残存もSP群より軽度であった。3週後、熱架橋GF群には良好な腹膜再生が認められ、炎症性線維化は他群に比べ軽度であったが、SP群は材料の一部残存と炎症持続を認めた。6週目には各群とも腹膜再生像を認めたが、炎症性線維化はSP群、被覆無し群ではより高度であった。次に各架橋度のGF及びSPの溶解度曲線を求めると、我々の架橋度のGFはSPと類似した溶解性を示し、7日間で約80%程度溶解していた。さらに各材料上で培養線維芽細胞の増殖曲線は、GF上では細胞の経時的増殖を認め良好な再生の足場の性質を示した。一方SP上では細胞の増殖を殆ど認めず再生の足場の性質を示さなかった。 以上より次のことが明らかになった。(1)SPは細胞増殖や損傷組織の再生に対し抑制的に働くのに対し、GFは再生の足場をして作用し、その結果、GFは良好な腹膜再生を伴った癒着防止を実現する。(2)GFもSPも腹膜損欠損部に対し約1週間程度介在して癒着防止効果を示すが、被覆無しでは強固な癒着を生ずる。
|