2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21591747
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
伊佐地 秀司 三重大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (70176121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田端 正己 三重大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90291418)
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Keywords | 生体肝移植 / 過少グラフト / 脾臓 / 脾摘 / 肝再生 / 肝類洞内皮 / 門脈圧 / 炎症性サイトカイン |
Research Abstract |
生体肝移植では、ドナーの安全を最優先することが最も重要であり、成人間の移植では右葉グラフトより左葉グラフトが選択されることが最近では増えている。当科でも2006年以前は右葉グラフトの占める割合は70%に及んでいたが、2008年以降は30-40%に減少し、左葉グラフトが主流となっている。これにより、グラフト重量が少なくなり、グラフト重量/レシピエント体重比(GRWR)が0.8%以下の過少グラフト症例が増加し、その対策が急務となっている。過少グラフト克服のために臨床的には脾臓摘出による門脈圧コントロールの重要性が指摘されているが、最近、脾臓には門脈圧コントロール以外に全身の炎症反応を制御する作用があることが指摘されている。そこで、ラットの20%部分肝移植グラフト(過少グラフト)肝移植モデルを用いて、脾摘の有無による肝障害を比較し、脾摘の肝細胞保護効果について検討した。 その結果、脾摘群ではコントロール群(脾摘を施行せず)に比べて、7日生存率が50%から100%に有意に改善され、トランスアミナーゼの低下と組織学的肝虚血再還流障害の軽減が認められた。さらに脾摘群では、肝臓での好中球、単球・マクロファージの細胞浸潤が軽減され、TNF-α、IL-6の発現も低下した。また、肝移植直後の門脈圧の低下と肝微小循環の改善が脾摘により得られた。肝細胞の増殖率も脾摘により有意に増強された。 以上より、脾摘は肝細胞の増殖を抑制する炎症性サイトカインの産生を抑制するとともに、門脈圧コントロールによる肝類洞内皮障害予防作用により、過少グラフトの肝障害を軽減し良好な肝再生をもたらすものと考えられた。
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