2011 Fiscal Year Annual Research Report
拍動流体外循環と肋間動脈圧モニターによる胸腹部大動脈瘤の対麻痺予防
Project/Area Number |
21591798
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
末田 泰二郎 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (10162835)
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Keywords | 脊髄虚血 / 対麻痺 / 胸腹部大動脈瘤 / 運動誘発電位 / 知覚誘発電位 / 拍動流体外循環 / 定常流体外循環 |
Research Abstract |
胸腹部大動脈瘤手術中の最悪の合併症である脊髄虚血による対麻痺発生を予防する工夫として、遮断した大動脈の下半身を拍動流体外循環にしてAdamkiewicz(前脊髄)動脈への側副血流圧を上昇させれば対麻痺発生が抑制できると考えて本研究を立案した。平成23年度は、1)ビーグル犬5頭を用いて動物実験を行なった。胸部下行大動脈を腰部大動脈まで広範囲遮断して脊髄運動誘発電位の低下が遮断20分後より起こることを確かめた。次に下腿動静脈を用いて部分体外循環を行なった。遮断した大動肝を一部切開して拍動流体外循環中の第4~7胸椎の肋間動旅にカニューレを挿入して肋間動脈圧測定を行なった。定常流に比較して拍動流時は若干肋間動脈圧が上昇したが優位の上昇ではなかった。しかし、拍動流時の方が定常流時よりも大動脈遮断中の運動誘発電位低下が防止できた。脊髄知覚誘発電位には拍動流による変化は脊髄運動誘発電位より軽微であった。以上より、胸部下行大動脈遮断時の下半身灌流には定常流より拍動流の方が内腸骨動脈系等を介した側副血行路により脊髄腰膨大部の血流が改善して対麻痺予防効果があることが動物実験で示された。2)臨床応用を行なった。胸腹部大動脈瘤3例に拍動流部分体外循環を臨床応用した。定常流部分体外循環に比較して、大動脈遮断中の下半身灌流圧は若干上昇し、脊髄運動誘発電位の低下も見られなかった。3例共に何ら脊髄神経障害を起こさなかった。本研究は今後も発展性が期待でき、臨床例の積み重ねにより胸腹部大動脈瘤手術中の対麻痺予防策として実用性のある補助手段になると思われた。次の研究では、Adamkiewicz(前脊髄)動脈への側副血流を探る研究と本研究を連動して行いたい。
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