2010 Fiscal Year Annual Research Report
顔面神経核の逆行性変性阻止への末梢性、中枢性グリアの作用と軸索再生機序の解明
Project/Area Number |
21591859
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
長谷川 光広 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (70218460)
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Keywords | facial nerve / retrograde degeneration / brainstem / facial nucleus / axotomy / central nervous system / stereotactic surgery |
Research Abstract |
定位脳的手術手技により経小脳法により脳幹内顔面神経膝部で顔面神経中枢軸索のaxotomyを施行し、顔面神経核内の顔面神経細胞の逆行性変性モデルを作成、確立し、その逆行性変性の過程の詳細と変性阻止因子、変性促進因子を引き続き検討している。これまでに得た知見は、次のごとくである。損傷後1週間での、末梢神経軸索部損傷すなわち茎乳突孔部ではほぼ脱落なしで、これよりやや中枢である乳突孔内では約5%の神経細胞脱落がおきるのに対し、脳幹内損傷モデルでは、約30%の神経が脱落している。損傷後4週になると、コントロール群で約5%が脱落、茎乳突孔部の損傷で約10%、乳突洞内引き抜き損傷で50%の脱落である一方で、脳幹内損傷では97%の脱落が起き、これらの脱落の差異には統計学的優位さをもった。末梢神経組織からの液性因子の作用を確認すべく、損傷脳幹部位に小末梢神経片を移植した群では顔面神経核の脱落は80%(前述のごとく移植なしでは97%)と優位に脱落が抑制された。また、神経移植群では関与する液性因子の詳細はいまだ同定できていないものの、Schwann細胞から放出されるNGFの関与が想定される。また損傷2週後では筋組織移植操作が脱落を抑制するが、4週にはその効果は消失した。造血因子のひとつであるエリスロポイエチン(EPO)は脳幹のアストロサイトに弱陽性であるが、損傷側は反応性アストロサイトにその発現が増強されること、顔面神経核の神経細胞にEPO受容体が存在すること、さらに外因性EPOを損傷モデルに投与することにより顔面神経核の神経脱落が優位に抑制されることから、EPOの顔面神経核逆行性変性抑制への関与を見出した。また、外因性EPOの投与により、生存顔面神経細胞におけるNADPH-diaphorase陽性細胞の割合は減少したことから、顔面神経細胞生存の可否にNOの関与が示唆された。
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