2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経膠腫の生物学的特性に関与するエピジェネティクス制御機構の解明
Project/Area Number |
21591883
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渡邉 学郎 Nihon University, 医学部, 准教授 (40287652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 崇夫 日本大学, 医学部, 助教 (20350019)
吉野 篤緒 日本大学, 医学部, 准教授 (50256848)
片山 容一 日本大学, 医学部, 教授 (00125048)
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Keywords | 神経膠腫 / メチル化 / エピジェネティク / MassARAYY / 化学療法 |
Research Abstract |
脳腫瘍のうち最も分化度の低い膠芽腫は、治療に難渋する浸潤性悪性腫瘍である。2005年、多施設共同第III相臨床試験にてtemozolomide(TMZ)の有効性が証明されたことにより、膠芽腫の治療方法は大きな転換期を迎えたといえる。しかしながら、TMZがエビデンスを持つとはいえ、延命効果は3ヶ月に満たず、その恩恵はわずかといわざるをえない。エピジェネティクスとは、DNAの塩基配列によらない遺伝子発現制御に関わる後成的修飾である。癌治療の観点では、エピジェネティクな異常は可逆的な反応であることから、その変化の修復は効果的な治療法になり得ると期待されている。膠芽腫のエピジェネティクスに関わる最大のトピックスは、O^6-methylguanine-DNA methyltransferase(MGMT)遺伝子の高メチル化である。MGMTはTMZなどのアルキル化剤耐性の主因であるDNA修復酵素であり、高メチル化によるMGMTの不活性化はTMZ感受性を高めることが証明されている。TMZの耐性・感受性には、MGMT以外の遺伝子のエピジェネティクな異常が関与していると推察されるが、その分子機構についてはほとんど解明されていない。本研究では、革新的なDNA解析装置として注目されているMassARRAYを用いて、神経膠腫細胞株において、TMZ感受性と関連する遺伝子群のメチル化を網羅的にプロファイル解析した。MassARRAYでは、200-600bpのターゲット領域内の複数のCpGサイトを一度に同定・定量することが可能であり、ターゲット領域数やサンプル数を自由に組み合わせることが出来ることから、メチル化プロファイルの作成に適しているといえる。この結果、A172、U87MG、U251MG、T98G、YH13、AM38、およびU138MGの7つの神経膠腫細胞株において、zygote arrest 1(ZAR1)のメチル化が高頻度で検出された。ZAR1は卵巣に特異的に発現し、卵細胞の形成に関与するといわれている。手術検体での検討では、grade 1以外のいずれの神経膠腫でも極めて高頻度に認められており、その腫瘍形成に必須のエピジェネティクス変異と考えられる。
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Research Products
(2 results)