Research Abstract |
骨粗鬆症性脆弱性骨折の予防を目的に投与される骨代謝改善薬は,骨の修復過程に対しても何らかの影響を及ぼす可能性がある.本研究は,各種骨代謝改善薬が骨折や移植骨治癒過程に及ぼす影響を明らかにし,骨修復期の適切な骨代謝改善薬の使用指針の作成を目指す目的で行った. 最終年度である本年度は,ラット脊椎固定術モデルを用いて,アレンドロネート(ビスホスホネート製剤),塩酸ラロキシフェン(選択的エストロゲン受容体調節薬),およびテリパラチド(副甲状腺ホルモン製剤)の移植骨治癒過程に対する影響について調査した.アレンドロネート群では移植骨片が長く残存する傾向があったものの仮骨の形成は阻害されることなく,密な癒合骨塊が形成されたことから,骨癒合そのものには負の影響を及ぼさないと考える.テリパラチド群では,術後早期に大きな仮骨形成があった後,癒合骨塊の改変スピードも早まったことから,骨癒合促進作用をもっと考える.塩酸ラロキシフェン群では,癒合骨塊の形態,形状,時期には大きな変化はなく,骨治癒過程には大きな影響を及ぼさないと考える. 脊椎固定術後早期の治癒過程に促進的に働くテリパラチドの治療効果について臨床症例における影響を検討した.関節リウマチ,ステロイド使用,高齢などを合併し,術中所見でも骨脆弱性の著しかった6患者に対し,術後テリパラチド投与を行った.転院や通院不能により追跡調査ができなかった1例を除き,5名中4例については骨癒合が得られ,比較的早期に痛みが改善した.1例に術後2カ月頃から内固定インプラントのゆるみが生じたが,それにも関わらず骨癒合が得られつつあり,テリパラチドが有効に働いている可能性を示唆する.
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