2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21591978
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
鬼塚 信 宮崎大学, 医学部, 助教 (20264393)
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Keywords | 局所麻酔薬 / リドカイン / ミトコンドリア / アポトーシス / 腫瘍細胞 |
Research Abstract |
麻酔薬や麻酔方法の違いによる癌の進行、転移、あるいは予後への影響が注目されている。 吸入麻酔薬や麻薬が、癌の進行や転移を助長することが報告されている。 しかし、癌患者に局所麻酔薬を使用する時の影響についての報告は少ない。 そこで、局所麻酔薬による腫瘍細胞への影響を、生細胞数およびアポトーシス誘導細胞の割合を検証したところ、リドカインやプロカインなどの局所麻酔薬で、腫瘍細胞の増殖は抑制され、アポトーシスが誘導されることがわかった。さらに、ミトコンドリア経路のアポトーシス誘導のキーエンザイムであるカスパーゼ9,カスパーゼ3の酵素活性を高めたことで、局所麻酔薬によるアポトーシスがミトコンドリア経路である可能性が高いことがわかった。(Onizuka et al.J Anesth Clinic Res.2011;2:116-21)。そこで、細胞内pHとミトコンドリア電位を同時測定したところ、局所麻酔薬は、細胞内pHをアルカリ化するとともにミトコンドリア電位を脱分極させた。そして、細胞内pHとミトコンドリア電位は相関した。これらの結果から、局所麻酔薬によるミトコンドリア経路のアポトーシス誘導機序としてリドカインをはじめとした局所麻酔薬は塩基で細胞膜を通過し、水素イオンと結合してカチオンとなりナトリウムチャネルを遮断するが、この過程で水素イオンが局所麻酔薬に補足されることで細胞内は極度のアルカローシスとなる。ミトコンドリアは、電子伝達系で水素イオンの濃度勾配を形成する、すなわち、呼吸し、ATPを産生しているが、局所麻酔薬はこの水素イオンの濃度勾配を小さくすることで、電子伝達系を阻害し、しいてはミトコンドリアストレスそしてミトコンドリア経路のアポトーシスを誘導することを解明した(Onizuka et al.Anesth Analg.111:775-83,2010)。
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