2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳内神経ネットワークからみた吸入麻酔薬の情報伝達と作用機序に関する研究
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21591988
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
西村 欣也 順天堂大学, 医学部, 臨床教授 (80164581)
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Keywords | 吸入麻酔薬 / セボフルラン / Patch clamp / 微小電流 / テトロドトキシン / カドニウム / Caイオンチャネル |
Research Abstract |
脳内神経ネットワーク活動に与える影響をもとに,未だ作用機序が解明されていない吸入麻酔薬のネットワーク活動に与える影響を研究した.ここでは麻酔導入時にみられる"興奮期"の発生をもとに検討を加えた.すなわち運動脳内処理は大脳皮質-小脳系と大脳皮質-大脳基底核系で担われており,大脳基底核障害は振戦舞踏運動などの不随運動を来すことから,興奮期の運動症状は大脳基底核の入力部である線状体での情報処理不安定に起因すると考えた.実験はマウスの大脳皮質-線条体の細胞内電極:Whole-call Patch C-amp法により大脳基底核の入力中継点である線条体細胞,主にMedium spiny neuron:MS細胞の電気生理学的変化を記録分析した.セボフルランは気化器を用いて気化状態として人工脳脊髄液にバブリングし,灌流投与した.セボフルラン5分投与は線状体における抑制性シナプス電流IPSCの振幅を強力に抑制.これは興奮性シナプス電流EPSCの抑制より明らかに大きく,抑制-興奮系の間に不均衡が生じた.またテトロドトキシンを添加した微小電流解析ではセボフルランはIPSCの頻度を著明に低下させたためシナプス前終末でのGABA放出確率の低下によるものと思われた.さらに電位依存性カルシウムチャネル阻害薬であるカドニウムの添加によりIPSCへの効果が消失したことからカルシウムチャネルを介した作用と思われた.このように一過性に大脳皮質からの興奮性入力が増加すると同時に線条体では抑制性入力がより大きく抑制されることで,脳-線条体-視床という神経回路が興奮状態に傾くのではないか,と思われた.すなわち,この興奮-抑制の不均衡がセボフルラン麻酔導入時にみられる興奮期の発生のメカニズムの1つと思われた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
興奮期におけるIPSGとEPSCの不均衡.そしてカルシウムチャネルの関与など,最初に実験できたことはおおむね順調に展開していると思える.意識消失のための吸入麻酔薬にとって,この興奮期の発生は特異的な現象であり,今回の実験結果が吸入麻酔薬の作用機序解明のために役立つものと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
全身麻酔は意識消失,不動化,鎮痛など様々な要素が組み合わさった状態を人工的に造りだすものであり,脳の様々な核に作用するが,昨今GABA受容体との関係が注目されている.そして麻酔メカニズム研究ではこのGABA受容体が中心的存在となっている.最近GABA受容体を介する柳制性電流にはPhasic電流とTonic電流の2種類あることが明らかにされ,特にTonic電流は麻酔メカニズムの新しいターゲットとして注目をあびている.また線条体の投射ニューロンはGABAニューロンであるため,今後このTonic電流を取り上げ,Sevofluraneなどの吸入麻酔薬がTonic電流にどのような影響を与えるのかなどを解析していく.またGABA受容体のどのサブユニットが関連しているのかも併せて解析していくつもりである.
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Research Products
(3 results)