2009 Fiscal Year Annual Research Report
麻酔薬ポストコンディショニングにおける心筋ミトコンドリア保護効果に関する研究
Project/Area Number |
21591989
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
三尾 寧 Jikei University School of Medicine, 医学部, 准教授 (00266686)
|
Keywords | 薬理学 / 麻酔科学 / 臓器保護 / ミトコンドリ |
Research Abstract |
ラット左心室筋よりミトコンドリアを過去の報告と同様な方法により分離した。緩衝液にてミトコンドリアを希釈した後に酸素電極によりミトコンドリア溶液の酸素濃度の変化を測定した。ピルビン酸とリンゴ酸をミトコンドリア溶液中に加えることにより電子伝達系が賦活化され、酸素濃度は徐々に低下し、この期間を第2相呼吸という。次にADPを加えるとそれらがATPに変換され酸素濃度は急激に低下する(第3相)。その後投与したADPが全てATPに変換されると酸素濃度の低下は再び緩徐となる(第4相)。この第3相と第4相の酸素濃度低下速度の比をrespiratory control ratio(RCR)と言い、一般に値が大きいほどミトコンドリアの機能が保持されているとされる。 分離したミトコンドリアを一定時間低酸素に暴露、その後再酸素化し低酸素・再酸素化(虚血再灌流)前後で上記RCRを比較した。低酸素暴露再酸素化直前に揮発性麻酔薬を投与することで麻酔薬ポストコンディショニング、低酸素暴露前に麻酔薬を投与することで麻酔薬プレコンディショニングとした。RCRはプレコンディショニング群において低酸素再酸素化後に低下したが、ポストコンディショニング群ではその値が保持された。In vivoで麻酔薬プレコンディショニングを適応した後単離したミトコンドリアでは再酸素化後RCRの保持が認められていることより、麻酔薬プレコンディショニングの発現は細胞質成分が必要であるが、ポストコンディショニングにおいてはミトコンドリア単独で作用が発現することが確認された。ミトコンドリアはコンディショニング作用において中心的な役割を担っており、心筋ミトコンドリアの保護は心筋の保護作用に直結する。細胞質の有無に依存しない保護効果は作用発現が迅速である麻酔薬用ポストコンディショニングの作用機所の一つであると考えられた。
|