2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21592002
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
川上 勝弘 信州大学, 附属病院, 特任研究員 (90334911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川真田 樹人 信州大学, 医学部, 教授 (90315523)
川股 知之 信州大学, 医学部, 准教授 (80336388)
田中 聡 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (60293510)
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Keywords | 脊髄損傷 / オピオイド / 神経毒性 |
Research Abstract |
本研究の目的は,挫傷による脊髄損傷(Spinal cordcontusion injury : SCI)の時に,損傷部位(胸髄)からの遠隔部位(腰髄)へ投与されたオピオイドが神経毒性,(neurotoxicity)を有することを証明し,そのメカニズムを解明するものである.具体的には,(1)ラットの中部胸髄のSCIモデルを作成し,腰部くも膜下投与後に運動麻痺が悪化するモルヒネの量は9μgであった,これはラットでは,鎮痛のための用量(5μg以上)に近似する。(2)各種アゴニストを同様に投与した結果,この運動麻痺に関与するオピオイドレセプタは,μおよびδアゴニストであった.(3)神経毒性による運動麻痺は弛緩性でなく痙性であった.(4)SCIラットのくも膜下にモルヒネを3日間投与すると、ナロキソンで拮抗できない痙性麻痺が生じた.これは非オピオイド性の毒性と考えられた.(5)SCI後、モルヒネまたは生理食塩水を3日間クモ膜下に持続投与し,腰髄(L4)を形態上解析したが,運動ニューロンに差はなかった.この実験の意義は,あるニューロンへのシナプス入力が傷害あるいは破壊された場合,本来神経毒性を持たない薬剤(オピオイド)が,このニューロンに対して通常投与量でも,神経毒性を有するようになる現象を提示したことである.これは新たな概念による神経毒性であり,脳のどの部位の損傷でも起こりうる.現在,麻酔薬の発がん性や、麻酔薬による胎児・小児の神経細胞分化の障害作用が報告され始めている.この麻酔薬・麻酔薬関連の神経毒性による研究は,新たな研究分野に発展する可能性があるだけでなく,麻酔の安全性を確立する見地から,重要性が高いと考えられる
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