2011 Fiscal Year Annual Research Report
機能的磁気共鳴画像法を用いた慢性疼痛脳内メカニズムの解明
Project/Area Number |
21592004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
倉田 二郎 京都大学, 医学研究科, 講師 (50349768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福山 秀直 京都大学, 医学研究科, 教授 (90181297)
福田 和彦 京都大学, 医学研究科, 教授 (90199224)
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Keywords | 機能的磁気共鳴画像法 / 慢性疼痛 / 腰痛 / 神経障害性疼痛 / アロディニア / 後帯状皮質 / 大脳辺縁系 / Default mode network |
Research Abstract |
10人の慢性腰痛患者と12人の健常被験者に、腹臥位で腰部圧迫刺激を与えながらfMRIを撮像し、腰痛関連脳部位として前頭皮質・島皮質・後帯状皮質などを同定した。特に、慢性腰痛患者では健常被験者に比べ後帯状皮質の陽性賦活が高い傾向を示すという従前からの知見を確認した。さらに、慢性腰痛患者では、腰部圧迫疼痛刺激を与えたとき、楔前部を中心とするdefault mode network (DMN)の陰性賦活が弱い一方、健常被験者ではDMNの強い陰性賦活を観察した。DMNは、後帯状皮質を中心として離れた複数の脳部位に分布するネットワークであり、注意を要する状態で一様に陰性賦活を呈することが知られている。以上のことから、慢性腰痛患者における後帯状皮質の陽性賦活は、DMNの機能不全に関連する現象であることが推察され、慢性疼痛患者に観察される認知機能障害に関連する可能性があると考えられる。現在国際誌への投稿準備中である。 また、複雑性局所疼痛症候群患者2人に対して電気痛み刺激によるfMRIを施行した。アロディニア症状をもつ患者では、患側刺激により大脳辺縁系を含む脳の広い領域で両側性に強い賦活を見せたのに対して、アロディニア症状をもたない患者では、患側刺激による脳賦活が弱く非特異的パターンを呈した。これらの結果は、慢性疼痛の症状・病態により、大脳における過敏もしくは求心路遮断という異なる様相を示すものとして興味深い。すなわち、神経障害性疼痛の要素が強い慢性疼痛においては、内側侵害受容系を中心とする脳領野の過剰反応が観察されるが、神経障害性疼痛の典型的症状を呈さない(心因性要素ないし社会的要素が強い)慢性疼痛では、正常な疼痛関連脳活動を呈する。この対照的な結果を短報として国際誌に報告し、さらに被験者を追加する予定である。 これらの知見は、慢性疼痛における(1)特異的脳賦活パターンと脳ネットワーク機能障害の存在、ならびに(2)神経障害性疼痛の診断と治療評価における機能的磁気共鳴画像法の有用性、以上二点を示唆するものである。慢性疼痛の脳内メカニズムを解明するという本研究課題の目的に近付く有意義な成果と考えられる。
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