2009 Fiscal Year Annual Research Report
肥満および前糖尿病状態における神経障害性疼痛モデルの解析
Project/Area Number |
21592023
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
前田 武彦 Wakayama Medical University, 医学部, 准教授 (50271010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸岡 史郎 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60137255)
木口 倫一 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90433341)
小林 悠佳 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20511562)
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Keywords | アディポカイン / アロディニア / 高脂肪食 / 脂肪細胞 / 生活習慣病 / レプチン / 神経障害性疼痛 / 坐骨神経 |
Research Abstract |
アディポサイトカインは脂肪細胞由来生理活性物質であり、生活習慣病の主たる成因として注目されている。最近では、脳神経系への生理作用も報告されており、神経疾患への関与の可能性が指摘されている。我々は、以前より、2型糖尿病治療薬として利用されているペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γ作動薬ピオグリタゾンが神経因性疼痛モデルにおける触アロディニアならびに熱痛覚過敏に有効であることを示してきた。さらに、アディポサイトカインの一種であり、アロディニア形成に関与するIL-6ならびにTNF-αの発現は、PPARγ刺激により減弱することも明らかにしてきた。本年度は、アディポカインに属するレプチンのアロディニア形成における役割について検討した。マウス坐骨神経(SCN)部分結紮(PSL)により、結紮側SCNにおけるレプチンの発現が増加した。レプチン中和抗体のSCN周囲投与はアロディニアを減弱し、またレプチン遺伝子欠損動物ob/obマウスはアロディニアの不形成を示した。レプチン受容体細胞内シグナルであるJak-STAT経路のPSLによる活性化は、アロディニア形成の基盤分子とされているCOX-2,iNOSならびにMMP-9のmRNA発現を結紮側SCNにおいて増大させた。さらに、PSLによりSCNに集積するマクロファージにおいて、レプチン受容体細胞内シグナルが活性化されることが示された。以上の結果から、レプチンは結紮による触アロディニアの形成を促進性に調節すること、そして結紮側SCNが作用部位の一つであることが示唆された。本研究成果から得られた仮説は、末梢神経損傷による神経障害性疼痛モデルから導いた結論であるが、アディポカイン生成のアンバランスを基礎病態とする肥満および前糖尿病状態における疼痛の形成機序にも通ずる可能性があり、アディポカインが慢性疼痛形成の共通の基盤分子であることを提唱する重要な成果である。
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Research Products
(5 results)