2012 Fiscal Year Annual Research Report
腎癌関連遺伝子解析・蛋白解析による病理・予後診断、オーダーメイド医療の構築
Project/Area Number |
21592058
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
杉村 淳 岩手医科大学, 医学部, 講師 (80306018)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 腎細胞がん / 後天性腎嚢胞 / 遺伝子 / 免疫染色 |
Research Abstract |
末期腎不全患者に高率に発症する後天性嚢胞腎ではrenal cell carcinoma(RCC)が高頻度に合併する。このようなRCCではclear cell RCC やpapillary RCC等sporadic RCCの組織型に加えacquired cystic disease (ACD)-associated RCCやclear cell papillary RCC等末期腎不全患者に特異的RCCをみるが病理組織学的鑑別が困難なことも多い。従来の報告ではα-Methylacyl CoA Racemase (AMACAR),cytokeratin-7,vinculinが鑑別に有用とされているが、多くのマーカーを用いて後天性嚢胞腎に合併したRCCの免疫組織学的特徴を明らかにした報告は殆どない。我々は上記にKit,RCC-marker,Glutathione S-Transferaseα(GST-α),Carbonic Anhydrase IX(CAIX),vimentin,PAX-2を加え、RCCを合併する後天性嚢胞腎33例を用いて免疫学的プロフィールについて検討した。ACD-associeted RCCは7/8例がvimentin陽性であったが、CAIXは発現していなかった。Papillary RCCはCK7,PAX-2を除きACD-associeted RCCと類似パターンを示した。Clear cell papillary RCCは2/3例がGST-α,CAIX,vimentin強陽性を示した。Clear cell RCCで早期転移した1例はCAIX陰性であった。KITは全例陰性であった。後天性腎嚢胞に合併したRCCは多彩な免疫組織学的プロフィールを示したが、複数のマーカーを組み合わせることで正確な鑑別診断が可能と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
悪性腫瘍に対してより有効な診断・治療を行うことは、臨床データ、悪性腫瘍の発生や進展、予後決定に関与する特定遺伝子の発現、治療に対する感受性を解析し比較検討することから可能になると期待される。本研究では、腎細胞癌マイクロアレイ結果から抽出された組織型や予後関連遺伝子候補(Adv Cancer Res. 2003; 89: 157-81.)を中心に、腎細胞癌臨床検体を使用して蛋白・mRNAレベルの解析を行い、臨床情報を加え、さらに精度の高い遺伝子情報とするように比較検討・解析を行うことが重要であった。今回は後天性嚢胞腎に合併した腎細胞がん組織を使用し、多くのマーカーを用いて免疫組織学的特徴を明らかにした。後天性嚢胞腎に合併した腎細胞がんは多彩な免疫組織学的プロフィールを示したが、複数のマーカーを組み合わせることで正確な鑑別診断が可能と考えられた。しかし、臨床データとの関連性についてはまだ解析していない。 今後臨床データを組み合わせることで、腎細胞癌の正確な組織診断、予後予測、治療法の創造・選択が可能となる。免疫染色を追加するとともに臨床データを含めた分析を進め、結果を基に個々の腎癌症例の解析を行い、その患者の持つ特異的な遺伝子情報を明らかにし、オーダーメイド医療を実現化に近づきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.症例数の増加に努める: cDNAマイクロアレイにより抽出された、腎癌の各組織型特異的遺伝子・予後関連遺伝子を中心に、責任遺伝子候補をターゲットに、免疫染色、(RT-PCR)等複数の方法で腎癌臨床検体およびパラフィンブロックより薄切した未染プレパラート)における遺伝子個々の蛋白・mRNAレベルの発現を評価する。 2.臨床データを加えた解析の実行: 臨床データおよびcDNAマイクロアレイの結果から、各組織型特異的遺伝子・予後規定遺伝子候補をターゲットに免疫染色・RT-PCR等で各サンプルにおける遺伝子個々の蛋白・mRNAレベルの発現を評価する。 3.結果の発表: 解析で得られた責任遺伝子について、その作用やこれまでの報告を参考に、その制御法の検索を行う。将来の診断・治療に有効となりうる手段の検討も行う。データを集積し患者個々にあわせた治療法 individualized medicine を検討し、より精度の高い遺伝子情報とし、結果を発表・投稿する。(個々の患者の持つ特異的な遺伝子情報を明らかにし、オーダーメイド医療を実現化に寄与する。)
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