2010 Fiscal Year Annual Research Report
セルトリ細胞の分化・成熟と、雄性生殖器の発生および精子形成との関わり
Project/Area Number |
21592081
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
林 祐太郎 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (40238134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 祥敬 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (60305539)
水野 健太郎 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 臨床研究医 (70448710)
黒川 覚史 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 研究員 (50468253)
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Keywords | 精巣 / 生殖細胞 / セルトリ細胞 / 46,XX / ROCK1遺伝子 |
Research Abstract |
精巣の発生には、Y染色体上のSRY遺伝子が必要不可欠であり、胎生期の特定の時期にセルトリ細胞内におけるSRY遺伝子発現をきっかけとして性分化のプロセスが開始される。これまでにも、ほ乳類の性分化に関わる候補遺伝子がいくつか報告されているが、それらの機能的な結びつきは明らかにされていない。セルトリ細胞は性分化に重要であるのみならず、出生後の精子形成に至るまで生殖細胞を支持・栄養している。前年度までに私たちは、ES細胞を起点とする生殖細胞のin vitro分化・誘導系を用いた研究から、培養液中のグルコース濃度が細胞分化に影響を及ぼすことを見出しており、さらに異なるグルコース濃度下で発現差を示す遺伝子として、Txnip・Pttg・RuvBl2遺伝子を見いだしている。このうち、Txnip遺伝子は性分化後の胎生12.5日頃からマウス性腺に発現を認め、成熟精巣に至るまでセルトリ細胞に発現を認めた。セルトリ細胞内において、Txnip遺伝子がレドックス制御の主要因子であるThioredoxinと結合し、その働きを阻害することで細胞増殖に影響していると考えられた。 本年度は、げっ歯類の精巣ではなく、ヒトの精巣組織における遺伝子発現解析研究を行った。性分化異常症の中でも、染色体が46,XXにもかかわらず内性器としての精巣を有する症例が存在する。SRY遺伝子の転座により説明しうる場合もあるが、SRY陰性の症例も存在し、どのように精巣が分化したのかは不明である。本学ヒト遺伝子解析研究倫理審査委員会の承認のもと、手術時に採取しえた46,XX男性症例の精巣組織と、46,XY精巣組織との遺伝子発現差についてPCR-Subtraction法を用いて比較を行った。その結果、46,XX精巣で発現亢進する14遺伝子、発現低下する7遺伝子を同定することができた。発現亢進する遺伝子群の中でROCK1遺伝子はセルトリ細胞、精子形成細胞に発現することを免疫染色で確認した。ROCK1遺伝子は、Rhoキナーゼをはじめとする細胞内シグナル伝達系の中核を担っており、この遺伝子カスケードが活性化されることによりSRYを欠損しても精巣発生が促される可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)