2010 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内膜症・エストロゲン依存性婦人科腫瘍の発生・進展機構の分子的解明
Project/Area Number |
21592089
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢野 哲 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (90251264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 俊介 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (70270874)
平池 修 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20529060)
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Keywords | エストロゲン受容体 / 乳癌 / 卵巣癌 / ホルモン依存性腫瘍 / 癌抑制遺伝子 / BRCA1 / SIRT1 / TFII-I |
Research Abstract |
【目的】BRCA1はDNA修復関連の癌抑制遺伝子で、生殖細胞レベルの変異保持者は乳癌・卵巣癌発症の生涯リスクが高いとされている。近年、BRCA1変異性乳癌・卵巣癌症例がPARP阻害剤による分子標的治療に高感受性であることが注目され、更なる分子機構の解明が望まれる。我々は、乳癌関連遺伝子産物DBC1・多能性転写因子TFII-Iが含まれる新規BRCA1複合体を同定し、この複合体の細胞周期調節・細胞死経路における役割を報告する。【方法】DBC1・TFII-I・BRCA1の複合体形成能を免疫沈降法にて検討した。細胞内でのDBC1・TFII-I・BRCA1の動態変化を蛍光免疫染色法で観察した。ルシフェラーゼアッセイにてDBC1・TFII-I・BRCA1の相互作用による転写活性化能への影響を検討した。ヒト乳癌細胞株MCF-7細胞における内在性DBC1・TFII-IをsiRNAでノックダウンし、フローサイトメトリーにて細胞死誘導能及び細胞周期調節能を検討した。【成績】1)DBC1とTFII-Iは相互にN末端を介して結合し、BRCA1を含む三者複合体を形成した。2)HeLa細胞核内でDBC1・TFII-Iの複合体形成を確認した。DNA傷害剤処理によるアポトーシス誘導時、両者は核内から細胞質へ複合体形成しながら移行した。3)DBC1・TFII-IはBRCA1を介して細胞生存因子である脱アセチル化酵素SIRT1の発現を制御し、DBC1はTFII-Iによるcyclin D1の発現を負に調節した。4)内在性TFII-Iのノックダウンにてアポトーシスが誘導され、一方でDBC1のノックダウンによりアポトーシスの抑制がみられた。【結論】DBC1・TFII-Iを含む新規BRCA1転写複合体を同定した。この複合体はアポトーシス経路及び細胞周期調節に重要な役割を担い、乳癌・卵巣癌発症メカニズムに関与している可能性が示唆された。
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