2011 Fiscal Year Annual Research Report
GDF-9の卵胞内標的遺伝子解析に基づく卵子機能マーカーの確立
Project/Area Number |
21592093
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
折坂 誠 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (80324143)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 克成 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (60529345)
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Keywords | GDF-9 / 卵子 / 卵胞 / 体外受精 |
Research Abstract |
【研究目的】我々は、卵子に特異的な成長因子の1つであるgrowth differentiation factor 9 (GDF9)の産量が、良質な卵子の機能評価マーカーとなり得る可能性について検討を続けている。排卵障害の原因として最も頻度が高い多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic ovary syndrome ; PCOS)で卵子GDF9の発現減弱が報告されることから、本年度はPCOS女性が卵胞発育障害→不妊症に陥るメカニズムについて、卵子内のGDF9発現異常が関与する可能性を検討した。【方法】PCOSの病因と推測されるLHやアンドロゲンの過剰状態が、ラット前胞状卵胞における(1)卵子内GDF9発現や、(2)卵胞発育、(3)ホルモン産生、(4)ステロイド産生酵素やゴナドトロピン受容体のmRNA発現に及ぼす影響を検討した。【成績】過剰なLHやアンドロゲンは、卵子GDF9発現を抑制する一方で、前胞状卵胞の発育を有意に促進した。(1)LHが卵胞中の17α-ヒドロキシラーゼ発現を介してアンドロゲン産生を亢進すること、(2)アンドロゲン受容体の特異的阻害剤を添加するとLH誘導性の卵胞発育が抑制されることから、LHはアンドロゲン産生を介して前胞状卵胞の発育を促進すると考えられた。一方で、LH刺激により増大した卵胞では、顆粒膜細胞におけるFSH受容体発現が減弱しており、FSH誘導性の卵胞発育が有意に抑制された。【結論】LH/アンドロゲン系は、初期の卵胞発育を直接促進する可能性がある。しかしながら、一旦LH/アンドロゲン系が過剰状態になると、卵子内のGDF9発現が抑制されるとともに、前胞状卵胞がFSHに対する通常の反応性を失ってしまい、FSHに依存する胞状卵胞以降の発育・成熟過程も損なわれる可能性がある。高LH環境に伴う卵子GDF9や顆粒膜細胞FSH受容体の発現抑制は、PCOSにおける難治性排卵障害や高い流産率と関連するかもしれない。
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