2011 Fiscal Year Annual Research Report
寄生虫由来免疫制御物質による不育症治療の実験的研究
Project/Area Number |
21592114
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
早川 智 日本大学, 医学部, 教授 (30238084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相澤 志保子 日本大学, 医学部, 助手 (30513858)
泉 泰之 日本大学, 医学部, 研究員 (50459872)
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Keywords | 習慣流産 / 寄生虫 / 免疫調節 / 衛生仮説 |
Research Abstract |
わが国では妊娠した女性の4割に流産の経験があり、流産を繰り返す不育症も16人に1人の割合であることが、厚生労働省研究班による実態調査で明らかとなった。不育症のリスク因子としては、染色体、子宮形態や凝固機能に異常を認めるもの、抗リン脂質抗体陽性などがあげられているが、原因不明が約6割を占めている。原因不明の不育症の一部では免疫の関与が推定されており、ステロイドや免疫グロブリンの投与、抗サイトカイン療法が有効であるとする報告もあるが、エビデンスは確立していない。近年、自己免疫性疾患、アレルギー疾患に対し、抗サイトカイン療法に加えて、寄生虫由来免疫抑制物質の有効性が報告されている。我々は衛生環境によりアレルギー疾患の頻度が変化するというhygienehypothesisが不育症にも適応できるのではないかと考え、免疫機序による流産モデルとして確立されているCBA/Jメス×DBA/2Jオス交配モデルを用いて、犬糸状虫由来免疫調節物質rDiAgの流産予防効果について検討した。その結果、コントロール群の流産率42.9%に対して、rDiAg投与群では11.1%と大幅に改善した。このメカニズムを明らかにするために、母獣の血清サイトカインの網羅的な解析を行ったところ、rDiAg群では母獣血清中のIL-4、IL-23、TNF-αが有意に低下、TGF-βが有意に上昇していた。寄生虫由来抗原の妊娠予後を改善機序は従来知られていたTh2の誘導ではなく、Th1,Th2ともに抑制する新たな機構があると考えられた。Th1、Th2とは別の独自の細胞集団であるTh17細胞は、炎症反応の主役として感染症や自己免疫疾患同様、妊娠免疫でも重要な役割を果たすと。Th17の誘導にはIL-23が必須であり、我々の知見は寄生虫によるIL-23を介したTh17の抑制が妊娠維持に作用する可能性を示唆するものである。
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Research Products
(1 results)