2011 Fiscal Year Annual Research Report
RCAS1をターゲットとした新たな癌分子標的治療開発に関する研究
Project/Area Number |
21592134
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
園田 顕三 九州大学, 大学病院, 講師 (30294929)
|
Keywords | RCAS1 / リンパ球アポトーシス / 腫瘍間質組織 / 血管新生 / ectodomain shedding / 悪性腫瘍 / 治療標的分子 / RNA干渉 |
Research Abstract |
RCAS1は15種類の悪性腫瘍の独立した予後因子であり、臨床病理因子である進行期、組織型、分化度、腫瘍径、浸潤深度、脈管侵襲、リンパ節転移等とRCAS1発現が有意な相関を示すことが報告されてきた。RCAS1の生物学的活性に関する基礎的研究から、RCAS1がリンパ球を含む免疫担当細胞にアポトーシスを誘導し、腫瘍周囲間質組織に血管新生を含む質的変化を惹起することが腫瘍進展に有利な環境を形成することも明らかとなった。これらの研究背景を踏まえ、RCAS1をターゲットとした新たな癌分子標的治療を開発することを目的として本研究を行った。本年度における論文発表を行った研究成果は以下のとおりである。1.RCAS1分泌機構に関して:(1)RCAS1はphorbol ester刺激によるPKC-δpathway、受容体型tyrosine kinaseに増殖因子が結合することで活性化されるRas-MAPKpathway、およびG-protein coupled receptorからシグナルが誘導されるtransactivation pathwayの3種の経路を介して分泌型に変換されることを明らかにした。(2)RCAS1はshedding機構により分泌されるが、分泌後に受容体発現標的細胞にアポトーシスを誘導する生物活性を獲得し腫瘍の進展に寄与することが確認された。さらに、現在進捗している研究成果は次のとおりである。2.RCAS1分泌に関与する切断酵素に関して:RCAS1を発現かつ分泌する細胞株とRCAS1を発現するが分泌しない細胞株をmicroarray法で比較したところ、RCAS1のshedding機構においてはADAM9が切断酵素として重要な役割を担っていることが確認された。細胞株でのADAM9発現を人為的に変調させることによって、RCAS1分泌能の変化が誘導された。さらに、腫瘍組織でのRCAS1とADAM9の発現を確認したところ、RCAS1分泌能が高い細胞では両分子の高発現が確認された。以上の知見から、RCAS1およびそのshedding機構に関与する分子が癌治療における新規標的分子となり得ることが示唆された。3.RCAS1をターゲットとした標的治療の開発研究に関して:これまでの研究成果から(1)RCAS1の発現を抑制する特異的RNA干渉、(2)抗RCAS1抗体を用いたRCAS1機能抑制、(3)RCAS1分泌機構の制御が有効であることが確認された。
|
Research Products
(3 results)