2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21592175
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
森泉 哲次 信州大学, 医学部, 教授 (70157874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 菜奈恵 信州大学, 医学部, 准教授 (90334888)
川岸 久太郎 信州大学, 医学部, 助教 (40313845)
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Keywords | 嗅覚 / 哺乳 / 嗅上皮 / 嗅細胞 / 嗅球 / 僧帽細胞 / 外側嗅索 / 嗅皮質 |
Research Abstract |
最終年度は、これまで未解決のままにしていた重要な2つの課題について検討した。 (1)嗅覚中枢神経系は、嗅球-外側嗅索-嗅皮質で構成され、嗅球投射ニューロン(僧帽細胞)が外側嗅索という嗅覚伝導路を形成して、嗅覚情報は周辺の嗅皮質(前嗅核・嗅結節・梨状皮質)へ伝えられる。以前に、外側嗅索の切断は嗅覚異常をおこさないという論文が報告された。本研究課題に直結する重要な事項であるので、十分な検討を加えた。成熟ラットの右側の嗅球を吸引除去し、左側の外側嗅索を嗅球後端から中大脳動脈までの様々なレベルで鋭利に切断し、水とシクロヘキシミド溶液を用いて嗅覚機能を調べ,中大脳動脈から外側嗅索切断部までの距離を計測した。その結果、中大脳動脈から2.5mmを基準として、嗅球に近い外側嗅索を切断されたラットは無嗅覚となり、嗅球から離れた外側嗅索を切断されたラットは嗅覚機能を有していた。新生児ラットでも検討した結果、嗅球に近い外側嗅索を切断されたラットは哺乳不能(無嗅覚)となり、嗅球から離れた外側嗅索を切断されたラットは哺乳可能であるという同様な結果が得られた。今回の研究から、外側嗅索の切断はその傷害部位により、嗅覚障害をきたす場合と嗅覚障害をきたさない場合があることが明確になった。 (2)嗅球投射ニューロン(僧帽細胞)が、神経軸索(外側嗅索)の傷害により、神経細胞死をおこすかは重要なテーマである。以前に、嗅索全体の(外側嗅索を含む)切断で、僧帽細胞が細胞死をおこすとの論文が報告された。ニューロンの定量評価に影響を与える点で、本研究課題に直結する重要な事項であるので、十分な検討を加えた。成熟ラット並びに哺乳期(新生児)ラットの外側嗅索を切断し、1週後並びに4週後に、嗅球・脳の連続パラフィン切片を作成し、僧帽細胞数・僧帽細胞層の長さ・単位長さあたりの僧帽細胞数について計測した。その結果、切断側と非切断側で差がなく、細胞死は起こらないと結論された。詳細なデータは、研究成果報告書に記載するが、外側嗅索に限局した切断では僧帽細胞の細胞死は起こらないが、嗅索全体に及ぶ切断では僧帽細胞の細胞死が起こり、嗅球も約70%に萎縮することが明らかになった。
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