2011 Fiscal Year Annual Research Report
頭頸部がんにおける表皮成長因子受容体ファミリー遺伝子の変異解析とその薬剤感受性
Project/Area Number |
21592207
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
湯坐 有希 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30277090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 孝邦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (60147296)
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Keywords | 頭頸部扁平上皮がん / 表皮成長因子受容体 / 遺伝子変異 / 分子標的薬 / ゲノム医科学 |
Research Abstract |
平成23年度は頭頸部扁平上皮がん患者の原発巣92検体及びそのうちリンパ節転移巣のある検体31ペアを用い、表皮成長因子受容体(EGFR)ファミリー遺伝子の遺伝子変異に原発巣と転移巣で差異があるか解析を行いました。具体的にはEGFRについては全長で変異解析、その他HER2、HER3、HER4についてはキナーゼドメインの変異解析を行いました。 その結果、原発巣92検体中6検体でEGFR遺伝子の変異を認めました(6/92=6.5%)。これらはL858Rが2検体、E709Kが1検体、D770 ins Gが1検体で、これらにはリンパ節転移巣もありました。V765G、G1022Sが1検体ずつありますが、これらにはリンパ節転移巣はありませんでした。 D770 ins Gの検出された検体からはHER2遺伝子変異(K716E)も検出されました。胃がんや乳がんの報告例に比べて低い陽性率(1/92=1.1%)でした。一方HER3、HER4の遺伝子変異は1検体も認められませんでした。 リンパ節転移巣についてはHER2、HER3、HER4の遺伝子変異は1検体も検出されず、原発巣でL858Rの遺伝子変異がEGFRに認められた1検体においてのみ、同様にL858R遺伝子変異が検出されました。この検出率の乖離については、リンパ節組織というヘテロな細胞集団の中で腫瘍細胞の割合が低いことに起因しているのかもしれません。 以上のようなEGFRファミリー遺伝子の遺伝子変異解析を行い、いくつかのこれまでに報告されていない遺伝子変異を発見しましたので、それらについてその腫瘍原性について、BaF3細胞を用いた実験系で解析いたしました。その結果EGFRのE709K、D770 ins G変異は既報のL858R変異と同様にBaF3細胞をIL-3非依存性に活性化することができ、その機序にはEGFR及び下流のSTAT-3が常時リン酸化され活性化していることが関与していると考えられました。EGFR阻害剤に対する感受性は、E709Kは感受性を示しましたが、D770 ins Gは比較的耐性を示すことが判明しました。
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