2010 Fiscal Year Annual Research Report
銀イオンが創傷治癒機転に及ぼす影響の分子生物学的解析-創傷治癒を促進させるか-
Project/Area Number |
21592286
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
皐月 玲子 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (50410311)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺師 浩人 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (80217421)
橋川 和信 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (90403237)
榊原 俊介 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (50444592)
江尻 浩隆 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (70529552)
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Keywords | 創傷治癒 / 銀イオン / 線維芽細胞増殖因子 |
Research Abstract |
銀イオンの抗菌作用は古くから知られているが、近年医療分野でも注目されるようになり、数々の銀含有製剤が開発されてきている。本邦でも創傷被覆材のうち、銀イオンを徐放するものが発売されるようになった。同時に本邦では国内で開発されたbFGF製剤が創傷治療に用いられている。これらの併用は一見、創膓治療において極めて有効だと考えられがちであるが、銀イオンがbFGFをはじめとする創傷治癒に関与するタンパク質へ、どのような相互作用をし、線維芽細胞をはじめとする細胞増殖に関与するのかについて、一定の見解は無い。われわれは、銀イオン存在下での線維芽細胞の増殖および銀イオンへの正ないしは負の遊走性の有無、さらには銀イオンの細胞増殖におけるbFGFへの阻害作用の有無について検討を行いたく、本研究を開始した。 銀イオンの供給体として塩化銀を用いた。塩化銀の電離度はきわめて小さく、創傷被覆材から放出される銀イオン濃度に類似するためである。塩化銀飽和溶液を基準とし、これを適当な濃度の希釈したものをヒト線維芽細胞培養下に添加した。結果、銀イオン濃度の上昇に伴い線維芽細胞の生存率は低下し、また、その影響は細胞密度が小さいものほど顕著に現れた。次に銀イオン濃度を一定にした後、bFGF濃度を変化させて細胞増殖を確認したところ、bFGFを添加することで銀イオンによる負の影響は緩和されることが明らかとなった。一方で、事前にbFGFに銀イオンを暴露させておいたものを添加したところ、bFGFによる救済作用は著しく低下した。 以上の結果より、(1)銀イオン自体は軽度ではあるが細胞毒性を持つ。(2)bFGFは銀イオンの呈する細胞毒性を緩和する作用を持つ。(3)銀イオンはbFGFに対して直接的に作用し、そのタンパク質としての活性を低下させる。ことが明らかとなった。
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