Research Abstract |
本年度は,現職養護教論を調査対象として,まず,(1)経験した救急事例について半構成的面接調査を行い,知覚的手がかりをもとに質的に分析した。その結果,救急処置における実践力の向上を図るためには,判断のプロセスを自覚して意識的に学ぶことができるような知識の体系化が必要と考えられた。次に,(2)トリアージチェックリストに挙げている傷病別観察項目の学校における「必要度」と「実践度」についてリッカート尺度を用いた主観的評価を実施した。生命にかかわる観察項目については,必要度と実践度の割合は高い結果であったが,傷病の特徴的症状の観察項目は,ともに低い結果であった。これは,判断や対応に迷う現状を示唆しているといえ,観察方法の演習やロールプレイで実践力を高める必要があった。さらに,(3)平成22年9月~平成23年2月の6ヵ月間を調査期間として「頭部外傷」「顔面外傷」「四肢のけが」の3種類のトリアージチェックリストの試用を実施した。四肢における結果では,トリアージチェックリストの症状とその確定診断についての関連を分析した。得られた事例のうち,骨折群とそれ以外で比較すると,明らかな変形,強い衝撃,自発痛,自動運動制限,腫脹では骨折群で有意に頻度が高かった(明らかな変形,自発痛ではp<0.05それ以外はp<0.01)。骨折の有無による観察所見の感度・特異度では,自動運動制限は感度0.846,特異度0.826といずれも高かったが,自発痛に関しては,感度は高いものの,特異度は低く,骨折の判断のためにはあまり有用ではないと考えられた。以上から,実践に基づいた結果から観察項目を見直す方法としてトリアージチェックリストの精度を高める有用な方策といえた。 次年度は,これらの結果をもとに,救急救命士と救急医に調査を行い,養護教諭を対象とした研修会を実施する予定である。
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