2010 Fiscal Year Annual Research Report
免疫グロブリンGのFcγ部分を用いた脊髄損傷治療戦略の確立
Project/Area Number |
21592312
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
原田 直明 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (00309915)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡嶋 研二 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60152295)
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Keywords | インスリン様成長因子-I / 免疫グロブリン / 脊髄損傷 / カルシトニン遺伝子関連ペプチド / 知覚神経 / カプサイシン / 神経再生 / 運動麻痺 |
Research Abstract |
本研究の目的は、人免疫グロブリンGの構造の一部であるFcγを用いた外傷性脊髄損傷の新たな治療法確立を目指すところにある。これまでに、Fcγが知覚神経刺激作用を介して、脊髄のインスリン様成長因子-I(IGF-I)の産生を増加させ、神経細胞のアポトーシスを抑制することで、ラットの外傷性脊髄損傷を軽減する可能性を見出した。しかし、臨床においては、傷害された脊髄の神経細胞が再生しないため、運動麻痺が改善しないことが問題であり、神経再生を目的とした新たな治療法の確立が期待されている。IGF-Iは、神経細胞の再生にも寄与することが知られているので、知覚神経刺激作用を介して、IGF-I産生を増加させると、傷害を受けた神経細胞が再生する可能性が考えられる。そこで、ラットの外傷性脊髄損傷のモデルにおいて、運動麻痺が発生した後から、知覚神経を刺激するカプサイシンを投与して、運動麻痺が改善するか否かを検討した。外傷性脊髄損傷発生24時間後に後肢の運動麻痺がピークになるので、その時点からカプサイシンを1μg/kg/日で毎日皮下投与すると、コントロールのラットと比較して、14日目から運動麻痺の有意な改善が認められた。運動麻痺発生から、21日間、投与を継続し、試験終了後に摘出した脊髄中のIGF-I濃度を測定すると、カプサイシン投与群で有意なIGF-I濃度の増加が認められた。これらの結果から、知覚神経刺激作用を有するFcγを、脊髄損傷の発生後から投与することにより、運動麻痺を改善する可能性が示された。今後、Fcγが、カプサイシンと同様の治療効果を発揮することが、明らかになれば、この物質は、脊髄損傷治療における新たな治療薬となる可能性がある。
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