2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト唾液腺悪性腫瘍の癌幹細胞の同定と腫瘍組織構築への関与
Project/Area Number |
21592335
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
藤田 修一 Nagasaki University, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (00181355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 泰明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (80253673)
池田 通 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00211029)
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Keywords | 癌幹細胞 / 唾液腺腫瘍 / 腺様嚢胞癌 / CD133 / CD44 |
Research Abstract |
癌幹細胞は腫瘍の発育・転移や、治療の標的として注目されている。本研究ではヒト各種唾液腺悪性腫瘍から癌幹細胞を同定することと、唾液腺悪性腫瘍において、組織学的に癌幹細胞の分布を検索し、その組織構築にどのように関係しているかを検討することを目的としている。本年度は、唾液腺悪性腫瘍の新鮮材料が手に入らなかったため、癌幹細胞の免疫組織学的検索を中心として研究を行った。特に腺様嚢胞癌を対象とし、癌幹細胞の組織学的分布が腺様嚢胞癌の特徴的な増殖様式とどのように関係しているか検討した。 【方法】現在、唾液腺癌の癌幹細胞のマーカーは報告されていないが、他の腺癌(膵臓癌、乳癌、大腸癌)での癌幹細胞のマーカーとして、CD133,CD44が報告されている。組織学的構築の類似性から、唾液腺腫瘍においてもこれらが適応できるものと考え、ホルマリン固定パラフィン包埋された腺様嚢胞癌の多数例にこれらの抗体を用いて免疫染色を施し、増殖パターン別にその分布を観察した。【結果】CD133では、充実型・篩状型において陽性細胞は胞巣内部や偽嚢胞周囲にわずかに点在していた。充実型での細胞外基質の出現や、箭状型で多数の偽嚢胞の連絡により実質が網状の形態を示すようになると、陽性細胞の密度は増加していた。また、腫瘍周囲へ増殖している管状型・索状型組織では、陽性細胞が散見され、神経周囲に浸潤している腫瘍組織でも高頻度にみられた。CD44では陽性細胞はCD133より出現頻度は低いものの、CD133と近似し、特にリンパ節転移部位に高頻度にみられた。【考察・結論】腺様嚢胞癌において、癌幹細胞は浸潤先端部に多く含まれ、充実型・飾状型への組織構築に関与していることが示唆された。細胞外基質や間質に接する部位に癌幹細胞が高頻度にみられることは、癌幹細胞を保持する微小環境(ニッチ)の形成に間質や細胞外基質が関係していることが考えられる。
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