Research Abstract |
SLPI(分泌型白血球プロテアーゼインヒビター)は粘膜系での病原微生物に対する感染防御を担う自然免疫として機能する生体因子であることが示唆されているが,その作用機序に関しては依然不明な点が多く,また,口腔における産生細胞,産生誘導機序,口腔自然免疫における機能/役割等については明らかにされていない.そこで本年度は,まず,歯肉上皮細胞株であるGE1細胞を用いて,歯肉上皮細胞が(歯肉溝の自然免疫系において)SLPI産生細胞として十分な機能を有しているかを検討し,次にPorphyromonas gingivalis感染による相互作用,すなわち,P.gingivalis抗原刺激後のGE1細胞からのSLPI産生誘導活性について検討した.その結果, 1. 培養0日目から5日目のいずれのGE1細胞においても,無刺激状態で弱いながらもSLPI mRNAの発現が観察され,培養時間の差は認められなかった. 2. P.gingivalis凍結乾燥全菌体(Pg-WC)およびリポ多糖(Pg-LPS)刺激を行うとSLPI mRNAは増強した.歯肉上皮細胞からのSLPI産生はP.gingivalisの感染刺激を通して増強されることが明らかとなった. 3. P.gingivalis抗原刺激によるSLPI mRNA発現の増強にともない,IL-6, TNF-αおよびIL-1β mRNAの発現が誘導された.しかし,GE1細胞に対する発現誘導の経時的変化を検討した結果,SLPI mRNAの発現増強は,誘導されたIL-6による二次的な作用ではなく,P.gingivalis抗原による直接的な反応であることが強く示唆された. これらの結果より,歯肉上皮細胞がSLPI産生細胞として十分な機能を有していること,また,歯肉上皮細胞からのSLPI産生はP.gingivalisの感染刺激を通して反応性に増強されることが示唆された.
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