Research Abstract |
最終年度となる本年度は,これまでの成果をもとに,P. gingivalis感染に対するSLPIの感染阻害作用について検討した.その結果, 1.P. gingivalisの増殖活性に対しては,高濃度(30μg/ml)のrSLPIを添加してもその抑制効果は認められなかった, 2.P. gingivalisのみならず,報告のあるStaphylococcus epidermidis Escherichia coliについても,SLPIによる増殖抑制効果は認められなかった, 3.P. gingivalisの産生する主要プロテアーゼであるgingipainには,基質特異性の異なるArg-gingipainとLys-gingipainがあり,いずれも本菌の主要病原因子であることが示されている.そこで,両gingipainを含むP. gingivalis菌体外プロテアーゼ画分を用いて,SLPIの阻害活性について検討した.その結果,Bz-Arg-MCAを基質とした場合の活性(Arg-gingipain活性)は高濃度のrSLPI添加によっても阻害は認められなかったが,Z-His-Glu-Lys-MCAを基質とした場合の活性(Lys-gingipain活性)は50μg/ml以上のrSLPI添加によってほぼ完全に阻害された.一方,対照として用いたトリプシンに対する阻害活性は,Bz-Arg-MCAを基質とした場合に認められ,Z-His-Glu-Lys-MCAを基質とした場合には認められなかった. これらの結果より,歯肉上皮細胞が産生するSLPIは,慢性歯周炎の原因細菌であるP. gingivalisに対して増殖抑制効果は認められないものの,その主要病原因子であるプロテアーゼに対して強い阻害活性を示し,結果として,P. gingivalis感染抑制を通じて,口腔自然免疫としての役割を果たしていることが強く示唆された.
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