Research Abstract |
外傷や外科手術傷において,コラーゲンの異常発現によって生ずる瘢痕はQOLを著しく低下させる.本研究では,最近得られた私たちの知見に基づいてコラーゲンを選択的に分解する適切な酵素活性を持つプロテアーゼを探索し,対象プロテアーゼあるいはその高活性変異体の大量発現法を確立することにより,プロテアーゼ投与による瘢痕症や歯肉増殖症の治療方法の開発を目的とする 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は種々の化膿性疾患や肺炎,腸炎,食中毒などの感染性疾患を引き起こす病原菌であり,また,主要な院内感染原因細菌でもある.本菌は少なくても11種類のGlu特異的プロテアーゼスーパーファミリー遺伝子を有し,これにはV8プロテアーゼ(GluV8),及びSplA~F,及び表皮剥奪毒素(exfoliative toxin,ET)A~D等が含まれる.GluV8はコラーゲンを分解すること知られており、本研究の目的に合致する。そこでGluV8組換え体大腸菌発現系(Nemoto et al., 275,573-587.FEBS J.,2008)を開発し,Glu特異的プロテアーゼファミリーの活性化過程とプロセシングの普遍性について検討した.その結果,プロ配列-成熟酵素間に位置するAsn68-Val69の加水分解は,プロ配列Leu30-Asn68が段階的に加水分解されて短くなることにより顕著に促進されることが明らかになった(Roufら,生化学会,神戸,2010).さらに近縁菌であるStaphylococcus caprae及びStaphyloceccus cohniiの同族遺伝子配列をクローニングし,リコンビナント分子を発現して活性化機序を検討した結果,いずれもプロ配列の段階的短縮により酵素活性化が促進され最終的にX-Val1切断により成熟型に変換することが明らかになった(Ono et al., Biol.Chem.391,1221-1232.2010)
|