2011 Fiscal Year Annual Research Report
三叉神経節ニューロンの興奮性に対するグリア細胞由来神経栄養因子の役割
Project/Area Number |
21592377
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
武田 守 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (20227036)
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Keywords | 生理学 / 脳、神経 / 三叉神経節 / 痛覚 / 神経栄養因子 / パラクリン / パッチクランプ / GDNF |
Research Abstract |
前年度、In vitroのパッチクランプ法により得られたデーターをもとに、今年度はIn vivoの条件下において三叉神経系の疼痛伝達に関わる三叉神経節(TRG)ニューロンの興奮性に対するGlial cell line-derived neurotrophic factor(GDNF)の生理的役割について、マルチバレル微小電極を用いた細胞外記録法により電気生理学的に解析した。ネンブタール麻酔したラットの三叉神経節(TRGs)にマルチバレルのガラス微小電極を刺入して、ユニット放電を顔面皮膚の電気刺激に応答するAδTRG-ニューロンより細胞外スパイクを同定した。これらのTRG-ニューロンの76%(16/21)は微小電気泳動的に投与したGDNF(10ng/ml,10-90nA,20-40s)により、自発放電が誘発され,電流依存性に放電頻度は有意に増加した。また顔面皮膚への機械刺激(von Frey hair、ピンセット)で誘発される放電頻度は電気泳動的に投与したGDNF(10ng/ml,10-90nA,20-40s)により有意に増加した。これらの増強効果はGDNF拮抗薬(K252a)(10ng/ml,90nA,20-40s)の同時投与により有意に抑制された。一方、顔面皮膚に起炎物質(CFA;Complete Freund's Adjuvant)を注入した炎症群ラット(CFA投与2日)の自発放電、顔面皮膚への機械刺激に対する放電頻度は正常群より有意に増加し、その増強効果はGDNF拮抗薬(K252a)(10ng/ml,90nA)の同時投与により有意に抑制された。正常状態において侵害受容性TRGニューロンの細胞体または神経末端から分泌されるGDNFによりその興奮性が制御され、また末梢炎症による痛覚過敏の発現にGDNFのパラクリン分泌が関与している可能性が示唆された。したがって、三叉神経系の炎症性疼痛にGDNF受容体(GFRα1)が新たな分子標的となり、その拮抗薬が治療に有効である可能性が示唆された。
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