Research Abstract |
顎関節症における関節の軟骨破壊と骨吸収を想定し,破骨細胞前駆細胞として用いたマウス由来の株化単球/マクロファージ(RAW264.7細胞)をIL-17Aで直接刺激して破骨細胞への分化に及ぼすIL-17の影響を調べた。その結果,RAW264.7細胞はtype Aとtype CのIL-17受容体(IL-17R)を発現しており,type AのIL-17R発現はIL-17A刺激により増加した。IL-17AはRAW264.7細胞の酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)染色性を低下させ,TRAP陽性の多核の破骨細胞様細胞数を減少させた。破骨細胞は,細胞質に存在する炭酸脱水酵素II型(CA II)によってCO_2とH_2Oから炭酸を生成し,その電離によって生じたプロトン(H^+)が,細胞膜のH^+-ATPaseによって波状縁から細胞外に放出される。放出されたH^+は,明帯によって閉鎖された空間の環境を低いpHに保ち骨無機質を溶解する。一方,破骨細胞は,マトリックス金属プロテアーゼ(MMP)-9やカテプシンKなどのプロテアーゼを産生して細胞外に分泌する。分泌されたこれらの酵素は,H^+による酸性環境下で骨基質タンパクを加水分解する。そこで,これらの骨吸収関連酵素の発現に及ぼすIL-17Aの影響を調べた。その結果,IL-17A刺激によってMMP-9とカテプシンK発現は有意に低下したが,CAII発現にはその影響が認められなかった。なお,IL-17刺激によるこれらの変化は,IL-17中和抗体の存在下で完全にブロックされた。次に、骨芽細胞との細胞間相互作用に不可欠なRANKL受容体(RANK)およびM-CSF受容体(c-fms)の発現に及ぼすIL-17Aの影響を調べた。その結果,IL-17A刺激によってc-fms発現は低下したが,RANK発現にはその影響が認められなかった。以上のことから,IL-17Aは,破骨細胞前駆細胞の破骨細胞への分化を抑制し,破骨細胞の骨吸収に関連するプロテアーゼ発現を低下させて,骨基質タンパクの加水分解を抑制することが示唆された。また,関連研究から,骨芽細胞(MC3T3-E1細胞)に圧迫力を付加すると,IL-17とIL-17Rの全てのsubtypeの発現が誘導されること,IL-17とIL-17Rは,骨芽細胞のRANKLとM-CSFの発現を増加させ,osteoprotegerin発現を低下させることが認められた。
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