2010 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の転倒予防に向けた歯科的アプローチ-歯および咬合の生涯維持の重要性-
Project/Area Number |
21592443
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
上野 俊明 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (30292981)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 敏幸 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (80360923)
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Keywords | 転倒 / アンケート / 咬合 / 外乱 / 重心動揺 |
Research Abstract |
高齢者の約3分の1は1年間に1回以上の転倒事故を経験しており,そのうち10回に1回の割合で骨折が発生している。そこで、本研究では高齢者を含む一般成人を対象として,転倒事故経験に関するアンケート調査を行い,転倒と運動・スポーツ習慣や咬合状態との関連性を検討した。本調査を実施した結果,成人253名(男105名,女148名,年齢30歳から94歳)から有効回答を得た。運動・スポーツ習慣の有無での転倒事故経験率を比較した結果,運動・スポーツ習慣のある者の転倒事項経験率が高い傾向にあった。「自分の奥歯でしっかり噛めますか」という質問に,「はい」と答えた者と「いいえ」と答えた者の間での転倒事故経験率を比較した結果,臼歯部咬合支持がある者の転倒事故経験率が低い傾向にあった。さらに、上顎右側456左側4567欠損、下顎左側567欠損を義歯にて咬合回復している被験者に、下肢の局所姿勢外乱時の立ち直り動作反応を電気生理学的に検証した。その結果、義歯装着でのクレンチング時のほうが義歯非装着でのクレンチング時よりも、電気刺激による外乱発生による重心動揺変位が小さくなる傾向が認められた。過去の研究成果と本研究結果を考え合わせると,う蝕,歯周病,外傷等による歯の喪失を予防し,例え歯を欠損したとしても,そのまま放置せず,適切な補綴処置を施し,さらには不正咬合も改善し,生涯にわたって適正な咬合関係の維持に努めることは,健全良好な咀嚼機能の確保のみならず,体力や身体バランス,また運動機能の減退予防に,さらには転倒事故の予防にも有用である可能性があると考えられる。
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