2011 Fiscal Year Annual Research Report
口腔インプラント表面でのソフトティッシュインテグレーションに関する遺伝子発現解析
Project/Area Number |
21592466
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
武部 純 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (50295995)
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Keywords | 表面・界面物性 / 遺伝子 / 細胞・組織 / 歯学 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
我々は、純チタン(Ti)表面へ陽極酸化(AO)処理と水熱処理を行うことで陽極酸化皮膜表面上にハイドロキシアパタイト(HA)を析出させる表面処理(SA処理)法について検討し、SA処理インプラント体表面では初期の骨形成能が高く、口腔インプラント治療への有用性を報告してきた。一方、インプラント支持による補綴装置が形態的・機能的に維持されるためにはインプラント体と結合組織の界面を外界から封鎖することが重要である。そこで、結合組織と接するチタンインプラント体表面への陽極酸化・水熱処理の効果を検討することを目的として、平成21、22年度では、培養線維芽細胞の初期付着形態、細胞付着に関わる細胞内タンパクキナーゼであるfocal adhesion kinase(FAK)を指標とした細胞内タンパクの局在について解析してきた。平成23年度は、培養線維芽細胞の形態、細胞内FAKタンパク発現結果を踏まえて、更なる分子細胞レベルでの検討を行うべくReal-time PCRによるFAK遺伝子の発現解析を行った。培養10時間後ではすべての試料に有意差は認められなかった。しかし、培養72時間後では、Ti、AO処理Tiに比較してSA処理Tiでは有意に高いFAK遺伝子発現を認めた。平成21、22、23年度の研究成果から、SA処理Ti上では、Ti、AO処理Tiに比較して線維芽細胞の付着は促進され、さらに、FAKのタンパク発現と相関してFAK遺伝子発現が有意に高まることが示唆された。これは、AO処理Tiに水熱処理を施すことで陽極酸化被膜がナノ構造となっていること、また高い表面自由エネルギーと親水性を有する表面性状であることが細胞内シグナル伝達系に関与したものと考えられた。平成23年度の研究成果から、SA処理Ti表面上における線維芽細胞の初期付着機構の一端が確認され、SA処理Tiは結合組織の付着に有利であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
結合組織と接するチタンインプラント体表面への陽極酸化・水熱処理(SA処理)の効果を検討することを目的として、平成21、22、23年度においてSA処理Ti上での線維芽細胞の形態、細胞内タンパク発現、遺伝子発現解析を行い、分子細胞レベルでの結果から臨床応用が期待できる成果を挙げてきた。また、当初平成24年度に予定していた上皮細胞系での研究も進めており、交付申請時の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトでは、本研究におけるSA処理法をTiインプラント体表面へ応用することを目的として、インプラント周囲歯肉軟組織の状態について線維芽細胞培養モデルを構築して分子細胞レベルから解析している。今後は、歯肉由来上皮細胞レベルにてSA処理Ti/細胞インターフェイスにおける分子細胞レベルでの解析を行い、そのメカニズムの解明ならびに口腔インプラント臨床への応用を目指した基礎データとしていく。
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Research Products
(29 results)