Research Abstract |
本年は,義歯の装着による前頭皮質の機能について,さらに検討を加えた.これは,今後,口腔機能にかかわる欠損補綴患者の自覚と前頭皮質活動の関連を検討するうえで必要となる基礎的解明と位置付けている. [目的]歯の部分欠損症例における義歯装着による1)前頭皮質活性と,2)咀嚼筋活動,3)咬合接触,4)摂取食品スコアなどとの関連を検討し,認知機能との関連に関する基礎データと考えた. 部分欠損症例16名を被験対象とし,脳機能計測にはf-NIRSを用い,前頭前野にプローブを装着した.義歯装着による咬合の評価にはデンタルプレスケールを用い,さらに咀嚼に評価には咀嚼スコアを応用した.さらに,咀嚼課題は,チューイングガム1枚を,安静40秒間を挟んだ,10秒間咀嚼を5回繰り返しとした.脳血流データの解析は,Hbマップならびにトポグラフィーを表記して行なった. [結果]義歯装着によって,右半側優位に前頭皮質の有意な活性が両側性に生じたが,同時に有意に向上した咀嚼スコアとの関連では,左側前頭前野の活動性と咀嚼スコアに有意な相関が示された.義歯装着と非装着による,咀嚼スコア,咬合接触面積,咬合力と前頭前野の皮質活動性の関連に関する正準相関においては,義歯装着によって生じる右前頭皮質の血流量の増加が咬合接触面積の増加と関連する傾向を示した. [考察]左側前頭前野については意味認知とのかかわりが報告されていることから,左側前頭前野の活動性は義歯装着によって想定され,食品に対する'噛めるか,噛めないか'といった意識とかかわると推察した. 一方,右側前頭前野の活動性が咬合接触面積と相関傾向を示したことは,義歯装着と咬合感覚や食塊弁別とかかわりが推察される. [結論]前頭皮質機能は有意に咀嚼に関連する自己評価を反映することから,次年度にかけて行なわれる咀嚼時の前頭皮質血流とデンタルQOLや認知機能などとの検討が可能と考えている.
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