Research Abstract |
[目的]平成22年度に,義歯装着による前頭前皮質の活性と咀嚼スコアならびに咀嚼筋活動量との有意な相関を確認した.本年度は,義歯治療が口腔関連QOL(Quality of Life),健康関連QOL,認知機能ならびに抑うつ,などと如何にかかわるものか検討を加えた. [方法]義歯治療前に口腔関連QOL(OHIP-J:Oral Health Impact Profile-Japanese Version),健康関連QOL質問表(SF36 v2:MOS 36-Item Short-Form Health Survey)ならびにMini-Mental State Examination(MMSE)とHamilton Depression Scale(HDS:うつスケール),咀嚼スコアを評価し,さらに咀嚼時の前頭前皮質血流と咀嚼筋活動を計測した.治療経過時には,義歯装着直後,1カ月後と2カ月後に同様の質問を繰り返し,2カ月後には再び,咀嚼時の前頭前皮質血流と咀嚼筋活動を計測した.本年度に検討が行われた被験者は4名である. [結果]1.旧義歯を使用していた被験者BとCでは,新義歯の装着により口腔関連QOL,なかでも機能の制限(咀嚼,発音ならびに外見の障害)に関する項目に改善傾向が示された.一方,使用経験のない被験者では,被験者Aで新義歯装着により一次的に痛みが生じ,口腔関連QOLに改善は示さなかったが,被験者Dで身体的障害ならびに社会的障害に改善傾向が示された.2.健康関連QOLでは,被験者BとCで新義歯装着による身体機能(日常生活の活動)の変化は示さなかったが,全体的健康感には改善傾向を示した.一方,被験者AとDでは健康関連QOL,なかでも身体機能(日常生活の活動)と全体的健康感に上昇傾向が示された.3.被験者A,B,C,Dのいずれもが,新義歯の装着により,前頭前皮質血流,MMSE,咀嚼筋活動ならびに咀嚼スコアに上昇傾向を示した. [結論]健康関連QOL,口腔関連QOL,咀嚼筋活動,咀嚼スコアならびに認知機能(MMSE)は新義歯装着により,向上する可能性が示された.今後も,Wisconsin Card Sorting Test時の脳血流計測を加えつつ本研究を継続することで,歯科補綴治療による咀嚼機能の改善と認知機能とのかかわりが,さらに明らかにできると考えている.
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