2009 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素環境におけるSP細胞の機能と分子標的治療に関する基礎的研究
Project/Area Number |
21592558
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
川崎 五郎 Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (60195071)
|
Keywords | 低酸素 / SP細胞 / 分子標的治療 |
Research Abstract |
本年度は、主として臨床検体を用いて研究を行った。対象はわれわれの施設で治療を行い病理組織学的に扁平上皮癌と診断され、臨床データの揃った症例とした。パラフィン包埋切片より薄切切片を作製し、各種の抗体を用いて免疫組織化学染色を行った。抗体としては低酸素環境にて癌細胞に発現するHIF-1αとその誘導因子として働いている可能性のあるmTORを用いた。mTORおよびHIF-1αの発現は、正常口腔粘膜に比較して口腔扁平上皮癌細胞において有意に高い発現がみられた。mTORおよびHIF-1αの発現と臨床的因子との間には相関性が認められなかったが、病理組織学的因子との相関性においては、癌細胞の浸潤度との比較では悪性度の高い群で発現が増加する傾向がみられた。細胞増殖関連因子であるPCNAについても免疫組織化学染色を行い比較検討したところ、PCNAとmTOR-HIF-1α発現系との間に相関性が認められた。 さらに、血管内皮細胞増殖因子VEGF-Aとリンパ管増殖因子VEGF-Cの発現と臨床病理学的因子との関連を明らかにするとともに,mTOR-HIF-1α経路との関連性を調べる研究を行った。VEGF-AおよびVEGF-Cの発現は扁平上皮癌において有意に高い発現がみられた。VEGF-Aは腫瘍の大きさと有意な相関性が認められ、癌細胞増殖能との相関が示唆された。VEGF-Cは臨床的および病理組織学的因子との間に有意な相関性は認められなかった。mTOR/HIF-1α共陽性群においては、VEGF-A(91%)およびVEGF-C(93%)の発現がみられ有意に高い相関性がみられた。mTOR-HIF-1α経路の発現に関連してVEGF-AおよびVEGF-Cが誘導されることが考えられ、特にmTOR-HIF-1α-VEGF-A経路の抑制は今後の口腔癌の新たな治療法となる可能性が示唆された。
|