Research Abstract |
医療の高度化や高齢患者の増加による日和見感染など感染症をめぐる様相は急激に変化している.発熱などの感染症状を有する確定診断前の初診患者は,最初から感染症専門病院を受診するわけではなく,市中医療機関の外来を受診する.本研究は,外来機能の強化による医療関連感染が減少する地域全体の連携システムを開発することを目的とする.名古屋市立大学看護学部研究倫理委員会の承認(平成21年7月),A病院部長会の承認(平成21年9月)を得て研究を開始している.外来機能の強化として,A病院では,受診時の感染症に関する問診票を導入した(平成21年9月).初診患者を対象に,問診票から受診時の症状(発熱,下痢等)を調査し,さらに2~3ヵ月後に診療録から確定診断名等を収集し,解析を継続している.平成21年10月~平成22年3月までの初診患者7,293名のうち,問診票に発熱等の症状が1項目以上該当する患者1,882名,該当しない患者5,411名であり,症状を有する者は感染症の確定診断が有意にされていた(x^2検定,p<0.05).特に,問診項目で38.5℃以上の発熱,咳を有する患者は,インフルエンザと確定診断が有意にされていた(x^2検定,p<0.01).外来で問診票の記入を徹底することは,感染症の抽出に有用であると考えられた.受付職員の感染予防のための行動を348場面,直接観察した.職員が,患者1名あたり対応するのは1~2分であり,「患者にマスクを渡す」,「感染症疑い患者用の待合スペースに誘導」等は16場面観察された.外来職員の麻疹・風疹等の血漿抗体測定は,看護師,薬剤師,臨床検査技師等で合計254名終了した.麻疹・風疹等の抗体陰性者が全ての職種にいた.特に,50歳代以上の風疹抗体陰性率が高かった.今後,調査を継続実施し,外来機能の強化による地域全体の医療関連感染の減少に向けた連携システムを開発する予定である.
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