Research Abstract |
医療の高度化や高齢患者の増加による日和見感染など感染症をめぐる様相は急激に変化している.本研究の目的は,外来機能の強化による医療関連感染が減少する地域全体の連携システムを開発することである.名古屋市立大学看護学部研究倫理委員会(平成21年7月),A病院部長会およびB病院施設長の承認を得て研究を開始している. 外来機能の強化として,A病院では平成21年9月より外来受付で感染症に関する自己申告による問診票を導入している.初診患者を対象に,発熱・下痢等の感染症に関連する症状・症候8項目を問診票から調査し,2~3か月後に診療録から確定診断名等と照合し,感染予防対策に有用であるかどうかを評価した.初診患者数26,503名のうち,有効回答数23,065名(回収率87.0%)であった.発熱等の問診項目の何れかに該当すると回答された内,感染症と診断されたのは1,072/1,398名(76.7%),診断されなかったのが4,218/21,667名(19.5%)であった(P<0.001,X^2検定).症状・症候による問診票は,外来での感染予防対策の一助として有用であることが示唆された.診断された感染症を感染経路別に分類したところ,インフルエンザ,急性上気道炎などの飛沫感染が78.6%,次いで接触感染19.6%,空気感染1.8%であり,咳エチケットなどの飛沫感染対策の徹底が重要であると明らかになった. また,ワクチン接種は費用対効果が高い感染予防対策であり,職員の感受性者へのワクチン接種が推奨されている.外来職員324名を対象に調査したところ,「接種不適当」に該当する理由が無いにも拘らずワクチン接種に消極的で免疫を獲得しないまま業務に従事している者がおり,中には,「自己に必要な予防接種が判らない」と回答していた.ワクチンプログラムへの参加を促進する解析が今後重要になると考える.
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